ヤマシタヘルスケアホールディングス、医療機器の需要堅調で増収計画、成長に向けた投資を加速
- 2025/7/28 07:29
- アナリスト銘柄分析

ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。26年5月期は人件費の増加や物流センターリニューアルに係る費用の計上などで減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は調整一巡して反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器卸売・メンテナンス、設備設計・施工、消耗品管理・物流などを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の製造・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器卸売・メンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営・事業承継支援などのコンサルティングサービス、イーディライトは病院向け予約ソリューション、エムディーエックスはDX技術関連製品・サービスの提供、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向けネットワーク構築・ソフトウェア受託開発、鹿児島オルソ・メディカル(23年12月子会社化)は鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器・関連消耗品の販売、マイクロソニック(24年6月子会社化)は超音波を用いた医療用機器の開発・販売を展開している。
25年5月期セグメント別売上高は医療機器販売業が644億487百万円で内訳は一般機器分野(一般医療機器備品、放射線診断装置等)が94億13百万円、一般消耗品分野(汎用消耗品、手術関連消耗品等)が258億35百万円、低侵襲治療分野(内視鏡・サージカル備品等)が147億17百万円、専門分野(眼科、整形外科透析等)が127億56百万円、情報・サービス分野(電子カルテシステム、設備保守メンテナンス等)が17億64百万円、医療機器製造・販売業(整形外科用インプラント製造・販売、超音波を用いた医療用機器の開発・販売等)が2億19百万円、医療モール事業(賃料収入)が72百万円だった。
なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。
■積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行
新中期経営計画(25年5月期~27年5月期)では、基本方針に「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を掲げ、目標値は最終年度27年5月期の売上高730億円、営業利益9億50百万円、営業利益率1.3%以上、経常利益10億円としている。資本コストや株価を意識した経営としては、PBR(株価純資産倍率)1倍以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指し、株主還元としては配当性向30%以上としている。
重点施策として人的資本経営、グループ間連携による新たな価値の創出と生産性向上、持続的成長に向けた投資、ESG経営による地域社会への貢献、ガバナンス最優先の風土醸成を推進する。
サステナビリティ経営への取り組みでは21年8月にESG基本方針を策定、22年7月に長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定し、24年8月に「ESG経営に関わる実績および目標」を公表した。また25年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において、4年連続で健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定された。
■26年5月期減益予想だが保守的
25年5月期の連結業績は売上高が前期比4.8%増の644億86百万円、営業利益が13.3%減の8億38百万円、経常利益が10.9%減の9億09百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.3%増の6億16百万円だった。なお特別損失で前期計上の減損損失2億円が一巡したため親会社株主帰属当期純利益は増益だった。配当は前期比5円増配の75円(期末一括)とした。配当性向は30.0%となる。
前期比では人件費の増加などで営業・経常減益だったが、計画(24年7月12日付の期初公表値、売上高673億19百万円、営業利益7億71百万円、経常利益8億21百万円、親会社株主帰属当期純利益5億09百万円)を上回り、営業・経常減益幅が縮小して着地した。
医療機器販売業は売上高が4.8%増の644億487百万円、営業利益(全社費用等調整前)が1.2%増の21億98百万円だった。売上高の内訳は、一般機器分野(一般医療機器備品、放射線診断装置等)が6.9%増の94億13百万円、一般消耗品分野(汎用消耗品、手術関連消耗品等)が3.7%増の258億35百万円、低侵襲治療分野(内視鏡・サージカル備品等)が0.6%増の147億17百万円、専門分野(眼科、整形外科透析等)が13.0%増の127億56百万円、情報・サービス分野(電子カルテシステム、設備保守メンテナンス等)が6.2%減の17億64百万円だった。一般機器分野の一般医療機器備品、放射線診断装置、一般消耗品分野の汎用消耗品、手術関連消耗品、専門分野の眼科関連機器などが増加した。また23年12月に子会社化した鹿児島オルソ・メディカルの連結も寄与した。
医療機器製造・販売業(整形外科用インプラント製造・販売、超音波を用いた医療用機器の開発・販売等)は、売上高が18.0%減の2億19百万円で営業利益が2億20百万円の損失(前期は1百万円の損失)だった。医療モール事業(賃料収入)は売上高が6.4%増の72百万円で営業利益が8.5倍の5百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が151億83百万円で営業利益が1億78百万円、第2四半期は売上高が161億79百万円で営業利益が3億44百万円、第3四半期は売上高が161億90百万円で営業利益が1億92百万円、第4四半期は売上高が169億34百万円で営業利益が1億24百万円だった。
26年5月期の連結業績予想は売上高が前期比4.9%増の676億47百万円、営業利益が29.6%減の5億90百万円、経常利益が30.5%減の6億32百万円、親会社株主帰属当期純利益が42.6%減の3億54百万円としている。配当予想は前期比5円減配の70円(期末一括)としている。予想配当性向は49.0%となる。
需要が堅調に推移して増収だが、人的資本投資に係る人件費関連コストの増加、山下医科器械の物流センターリニューアルに係る費用の計上、マイクロソニックにおいて開発中の超音波画像診断装置「ブラストスキャン」に係る研究開発費の計上などで減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は反発の動き
株価は調整一巡して反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価して戻りを試す展開を期待したい。7月25日の終値は2855円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS143円58銭で算出)は約20倍、今期予想配当利回り(会社予想の70円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3640円22銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約73億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)