伊藤園、ツムラと生薬残渣を活用したリサイクル紙を共同開発、異業種連携で実現

■年間3万8000トンの生薬残渣を循環利用、環境負荷低減へ

 伊藤園<2593>(東証プライム)は9月9日、ツムラ<4540>(東証プライム)と共同で漢方製剤の製造工程で発生する生薬残渣を活用した「生薬リサイクル紙」の開発に成功したと発表した。伊藤園の「茶殻リサイクルシステム」を応用し、ツムラのサーキュラーエコノミー構築に向けた取り組みを後押しした。両社は今後も異業種連携を通じて社会課題の解決や持続可能な環境づくりを目指す。生薬リサイクル紙は独特の質感や香りを持ち、和紙に近い風合いを特徴とする。パルプ使用量の削減や木材由来原料の代替につながり、封筒や名刺への実用化も進んでいる。2025年4月からツムラ従業員の名刺に採用され、9月には3種類の封筒試作も行われた。アップサイクル品には「ザンサイクル」マークを付し、幅広い展開が想定されている。

 今回の共同開発は、両社のサステナビリティ理念の合致により実現した。ツムラは年間約3万8000トンの生薬残渣を排出しており、堆肥化やバイオマス燃料化などで100%リサイクルを実施してきたが、需要拡大に伴うさらなる活用策が課題だった。一方、伊藤園は茶系飲料の製造過程で排出される年間約5万9000トンの茶殻を日用品や工業製品に応用する仕組みを2001年から確立しており、約100種類のアップサイクル製品を生み出してきた。この技術を生薬残渣に応用することで、新たな価値の創出につながった。

 両社は今回の成功を契機に、残渣活用にとどまらず共通課題への協働を広げる意向を示している。ツムラは環境負荷低減と循環型社会への貢献を強調し、伊藤園は自然由来製品を扱う両社の親和性の高さを指摘した。両社はそれぞれの強みを生かし、新たな製品・サービスの創出を進める方針だ。異業種連携によるリサイクル技術の進展は、持続可能な社会実現に向けた具体的な一歩と位置づけられる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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