
■ISSから放出された「BOTAN」に搭載、安定発電を確認
出光興産<5019>(東証プライム)は10月20日、同社が開発した宇宙用CIGS太陽電池を搭載した千葉工業大学の超小型衛星「BOTAN」が初期ミッションを達成したと発表した。「BOTAN」は10月10日(日本時間)に国際宇宙ステーション(ISS)から放出され、宇宙空間での電力供給が確認された。CIGSは銅・インジウム・ガリウム・セレンから成る化合物半導体で、同社の太陽電池は高い放射線耐性を有し、宇宙環境での実証が行われた。衛星は1辺10センチ、約1キログラムの立方体型「キューブサット」で、千葉工大の学生が宇宙産業を支える高度技術者育成プログラムの一環として開発した。
「BOTAN」は2023年4月に開発が始まり、2025年9月に米スペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられた後、シグナス補給船によりISSに輸送された。放出後は地上との通信が確立され、衛星の基本機能と初期ミッションの動作が正常に確認された。千葉工大は2021年から宇宙・半導体分野の専門人材育成を目的とするプログラムを実施しており、「BOTAN」は4機目のキューブサットである。放射線耐性が高く軽量な同社製CIGS太陽電池が評価され、搭載に至った。大学と企業が協働し、低コスト・短期間で宇宙技術の実証を進めることで、宇宙開発の裾野拡大が期待される。
出光興産は今回の宇宙実証を通じ、宇宙用CIGS太陽電池セルの性能と発電安定性を検証する。一般的なシリコンやガリウムヒ素セルと異なり、CIGSは放射線による劣化を自己修復する特性を持ち、長期間の出力維持が可能とされる。また、数マイクロメートルの薄膜構造により軽量化が実現でき、保護ガラスを不要とする設計も可能である。同社はこの成果を踏まえ、宇宙用CIGS太陽電池の市場投入を加速し、持続可能な宇宙開発と産業発展への貢献を目指すとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)