【小倉正男の経済コラム】マイナス金利――それでもゾンビ企業&経営者の淘汰が進む

小倉正男の経済コラム

■マイナス金利の功罪

 スルガ銀行がメディアに騒がれた時、確か取材に行ったことがあるな、と思い出したものである。

 沼津市に本店があり、駅からタクシーで伺ったのか、頭取や経営幹部に地銀の生き残り策や再編成への対応策をインタビューした。

 2005年末のことで、金融雑誌の編集長から取材を依頼されたのだが、不動産への過剰融資・不適正融資事件で思い出すことになった。スルガ銀行――、そういえば寒い頃に取材に行ったな、と。

 迅速審査を売り物に、賃貸アパート、賃貸マンションなど不動産投資に過剰に融資したというのである。一時はそれで大きく成功しており、首都圏にまで融資を広げていた。地銀の再編成でも呑み込む側の銀行といわれていた。

 友人のバンカー筋にいわせると、「いろいろあるがゼロ金利、マイナス金利が元凶で、地銀は融資するところがない。生き残りにムリな融資を重ねたことが背景にあるのではないか」ということだ。

■株価はバブル崩壊後の高値を更新

 ゼロ金利、マイナス金利は、ゾンビ企業を生き残らせていることは確かである。いまの企業は100億円借りても、200億円借りても、支払い金利は知れたものである。
 昔なら、それだけで支払い金利負担により経常損益で大幅赤字になった。確かにあまり有能といえない酷い経営者でも何とか生き残れている。

 一方で株価はバブル崩壊後の高値を更新している。
 「米中貿易戦争の懸念は残っているが、円安の進行でハイテクそのほかの輸出型製造業が第2四半期などから増額修正に向かうのでないか」とマーケットは強気になってきている。遅ればせながら好調な実体経済に目が向いてきたのは当然の動きといえる。

 米中のというか、トランプ大統領の貿易戦争で日本の製造業の株価は翻弄されてきた。ようやく、好業績の実体経済が浮かび上がろうとしている。第2四半期、第3四半期と業績で結果を出して、実体経済の好調さを示してほしいものである。

 ゼロ金利、マイナス金利が背景にあり、これはよい面といえるかもしれない。民主党政権の時代は、株式市場が死んでいた。それが蘇ったのは画期的なことであった。

■マイナス金利が解除されれば・・・

 アメリカは好景気を背景に金利上昇に転じている。日本も好景気であるのは間違いないのだが、金利を上げるにはまだ不安があるという状況が続いている。

 マイナス金利については内外から批判が強いが、いずれ是正する時が訪れることになる。
 その時には不相応に借金を重ねた企業は苦しむことになる。

 総資産の過半を超えて借金をしていたある企業では――、経営トップが退陣に追い込まれ、その経営トップが始めた不採算事業が再構築を余儀なくされている。
ゾンビ経営トップが、企業をゾンビ化させてきたわけだが、マイナス金利解除の前に是正されたわけである。

 実はこの企業は、マイナス金利をよいことに需要が見込めない新事業を開始して、収益・配当を大幅悪化させていた。退陣は当然のことだった。
 しかし、その企業に残された負の遺産は大きく、さらに大幅な減損処理などが不可欠ということである。無茶苦茶にされた企業は、再建するにしても大変な労苦が伴うことになる。

 日本においても酷い経営者は、時間がかかるにしても淘汰されている。マイナス金利が解除されれば、その効用のひとつはゾンビ経営者がぬくぬくと存続できずに淘汰を免れないということになるのだろうか・・・。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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