
■ホルムズが静まらぬ限り、楽観の春は来ない
相場には「彼岸底」という言葉がある。春分をまたぐころに下値を打ち、そこから春相場に向かうという経験則である。個人投資家としては、今年もそのアノマリーにすがりたくなる。しかし、現実はそうした願望を軽々と受け入れるほど穏やかではない。
中東では、米国、イスラエル、イランを軸とする軍事的緊張が続き、原油と天然ガス輸送の大動脈であるホルムズ海峡も、なお不安定なままだ。市場が本当に求めているのは、勇ましい報復の応酬ではなく、タンカーが何事もなく往来できる日常の回復である。そこが戻らない限り、「第3次オイルショック」懸念は消えず、原油高は企業収益と家計の双方をじわじわと圧迫する。
春の訪れはカレンダーが決める。しかし、春相場は季節だけでは始まらない。エネルギーの流れが落ち着き、地政学リスクがひとまず織り込み可能な水準まで後退して、ようやく市場は次を考え始める。今はまだ、その入口にすら立てていない。
■中東だけではない、相場の背後で膨らむ「トランプ・リスク」
厄介なのは、相場の火種が中東だけではないことだ。トランプ政権の政策運営は、関税、通商交渉、安全保障、対中外交、ウクライナ対応と、あらゆる局面で市場を揺らす可能性を抱えている。しかも厄介なのは、その振れ幅が大きいことである。昨日の強硬策が明日の取引材料になり、その翌日には別の火種が持ち上がる。市場にとって最も扱いづらいのは、悪材料そのものよりも、予測不能な悪材料である。
関税強化は企業のコストやサプライチェーンを直撃し、対中交渉は半導体やレアメタル、輸出規制を通じて製造業の先行きを曇らせる。ウクライナを巡っても、突発的な外交の手打ちや条件変更が起これば、エネルギー、為替、欧州市場を通じて波紋は広がる。要するに、相場は中東の砲声だけで揺れているのではない。ワシントン発の一言一句にも神経をとがらせている。
しかも11月の中間選挙を控え、政治的パフォーマンスが強まりやすい時期に入る。市場が恐れる「トランプ爆弾」は、一発で相場を吹き飛ばすような大型案件だけとは限らない。小粒でも連続すれば、投資家心理を冷やすには十分である。
■彼岸底があっても、待つのはⅤ字反騰ではなく地味な選別相場
こう考えると、仮に3月後半に「彼岸底」が見えても、その先に待つのは派手なⅤ字反騰ではあるまい。一本調子で上げる相場ではなく、警戒と安心が交互に訪れながら、全体としてじり高を試すような戻りがせいぜいではないか。
主役も変わる。日経平均を押し上げる値がさハイテク株が先導するというより、TOPIX型の広がりのある戻り、しかも金融、商社、食品、電力・ガス、医薬品、小売といった内需・ディフェンシブ系が相対的な強さを見せる展開の方が、よほど現実的だ。資源高や物流高をある程度価格に転嫁できる銘柄、景気の風向きが多少変わっても需要が大きく落ち込みにくい銘柄に、資金は向かいやすい。
満開の桜を見て、相場まで満開になると考えるのは早計である。今年の春相場は、浮かれる相場ではなく、見極める相場だ。彼岸底が来るかどうか以上に重要なのは、戻ったときに何が買われ、何が置いていかれるかである。華やかな全面高を夢見るより、原油高と政策リスクの時代に耐える銘柄を拾う。その地味な作業こそ、今年の春相場の本質に近い。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)























