【鈴木雅光の投信Now】まさに「呑み行為」だったワインファンド

 3月7日、東京地方裁判所に株式会社ヴァンネットが破産申請を提出しました。ヴァンネットという社名でピンと来た人は、かなり投資に興味を持っていらっしゃる方だと思います。

 この会社は、ワインファンドを組成・運営していた会社でした。大勢の人たちからお金を集め、プリムールという樽詰め段階で、フランスの銘醸ワインに投資するというスキームです。投資したワインは、すべてフランスの倉庫に眠らせておき、品質の劣化を防ぐため、フランス国外に空輸などはせず、あくまでもフランス国内で流通させるという触れ込みでした。ブルゴーニュの神と言われた名醸造家、アンリ・ジャイエ氏が2006年に亡くなり、彼の作ったワインの値段が急騰した時、同社が組成していたファンドに、そのワインが組み入れられており、高い実績をマーク。そこから注目度が高まり、オルタナティブ投資の一種として、ポートフォリオに組み入れることを推奨するプロの資産運用アドバイザーもいました。

 昨年末、ヴァンネットは金融庁から、登録取消処分を受けました。業務停止処分を飛び越し、いきなり登録取消処分ですから、その悪質ぶりが分かります。同社は、過去に償還を迎えたファンドについて、別のファンドの資金を流用することによって、高い運用利回りを提示していました。完全な自転車操業です。登録取消処分は当然でしょう。今回の破産手続きによって生じる負債額は40億円を超え、債権者は530人以上にも及びます。

 この手の資産運用に絡んだ事件は、後を絶ちません。マイナス金利のなかで、多くの個人は何にお金を預け、運用すれば良いのか迷っていることでしょう。そんな時、高い運用利回りを提示して、人々を騙そうとする輩が必ず出てきます。恐らくこれからも、この手の怪しい投資商品は、形を変えて出てくるはずです。なので、おいしそうな話には十分に注意して下さい。

 そして、ヴァンネットの件もそうだったのですが、メディアなどに登場している人が広告塔を務めているケースがあります。恐らく、広告塔になった本人も、大勢の人を騙して、自分だけ儲けようなどとは考えていなかったのかも知れませんが、それでも、ワインファンドについて本を書いたり、共同で「ワインファンド視察ツアー」を開催したりした以上は、相応の責任が生じるものと考えます。

 まあ、ちょっとした著名人がお勧めしているからといって、安易に信じない方が身のためでしょう。

(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

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