【編集長の視点】ストップ高で高値追いのオービスを先導役に林業ルネサス関連株が逆行高セクターの一角で存在感=浅妻昭治

編集長の視点

 投資家の大方が等しく希っているのは、大駆け株、大化け株の発掘である。急騰に次ぐ急騰、ストップ高などを示現する銘柄などをゲットしようものなら、それこそしてやったり、天にものぼる達成感に酔いしれるというものである。しかし、この大駆け・大化け株は、得てして高速エレベータ相場が避けられず、急騰もするが急落もするのが常で、まさに天国と地獄が背中合わせとなるリスクがつきまとう。短期値幅取りとばかりに飛び付き買いをした途端にハシゴを外されるなどということが起こらないとも限らない。こうしたことが繰り返されて引かれ玉を抱え込んでしまうと、米国の相場格言でいう「投資家は失望した投機家」と自嘲しなくてはならない挫折感に打ち萎れる羽目に陥る。

 新興市場株と主力輸出株は、いままさにこの達成感と挫折感のどちらに転ぶかの境目にあるようだ。新興市場株は、4月から大型連休明けにかけて、そーせいグループ<4565>(東マ)をリード役にストップ高銘柄が続出して逆行高を鮮明化したが、それがここにきてストップ安銘柄を交えて急落する銘柄が目白押しとなり、この突っ込み場面から再度のリバイバル相場があるのかないのか悩ましい状況にある。一方、輸出主力株は、大型連休中に為替相場が、1ドル=105円台までの円高・ドル安となって今3月期業績の3割、4割減益予想は当たり前のいわゆる「トヨタ・ショック」のオンパレードとなって株価が急落したが、ここにきて円相場が急騰前の1ドル=110円台まで巻き戻し、早くも業績は上方修正含みとして修復相場に弾みがつくのかつかないのか期待と懸念が半々となっている。

 それもこれも為替相場の先行き次第、本当にFRB(米連邦準備制度理事会)が、6月14日から15日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)で再利上げを決定するのかしないのか一点にかかっているといってもいいようである。再利上げなら1ドル=120円への円安・ドル高、見送りなら再び1ドル=105円台を試す展開も想定範囲内となって、相場の景色は、ガラリと一変する可能性がある。しかも、このFOMCを前に伊勢志摩サミット(7カ国首脳会議)では、為替相場の現状認識や財政出動について政治的な駆け引きが続き、国内では7月の参議院選挙を控えて衆参同時選挙や参議院・東京都知事同時選挙があるのか、来年4月予定の消費税増税の再延期があるのか、政治スケジュールがビッシリで、いま流行のAI(人工知能)だって正解を導き出すのが難しそうである。となればマーケットは、気迷い、戸惑いが続き、東証1部売買代金が連日、活況・閑散の分かれ目といわれる2兆円を下回って低調に推移したというのが前週末現在である。

 当コラムは、こうした天国と地獄が背中合わせの二者択一の短期張り銘柄よりも、自らの投資価値で中長期的に光り輝く堅実投資向けのバリュー株の投資情報を読者の皆さんに提供することを旨としてきた。相場全般が超強気と超弱気の交錯で乱高下するなか、所期の目的を達成しているかどうか忸怩たるところがあるが、今回は、堅実投資向きながら、株価的にも存在感を発揮しそうなセクター株をお届けできそうだ。もちろん大所高所に立った上から目線からの銘柄選択ではなく、地べたにはった下からのボトムアップ的な銘柄分析だが、その先導株になりそうな銘柄が、気迷い相場のなかでストップ高したからだ。

 ストップ高したのは、オービス<7827>(JQS)である。同社株は、今年5月18日に今10月期第2四半期(2Q)累計業績を上方修正、純利益が、前年同期比2.4倍と大幅続伸することを手掛かりにストップ高し、前週末には1000円大台にタッチし昨年来高値も更新した。上方修正は、木材事業の製品販売価格が前回予想を上回り、杉・檜・カラ松などの国産材の商材販売量も予想を上回ったことなどが要因で、2Q累計業績自体は、前回予想を据え置いた10月通期業績を上回っている。実は同社は、今年4月に木材事業の福山工場の建設を総投資額約36億8000万円として発表したが、このときは株価の反応度が限定的にとどまっていた。積極的な設備投資に業績な裏付けがフォローしたことが、ポジティブな株価評価につながったものだ。

 同社株は、林業ルネサンス株の一角に位置する銘柄である。林業ルネサス株については、当コラムでも再三取り上げ、今年3月には木質バイオマス発電関連人気と2本立てとなれば、人気テーマ株に浮上すると観測した。そのコラムの再掲になるようで心苦しいが、林業ルネサンス株は、低PER・PBRと評価不足の銘柄が大半で、好材料が続く銘柄もあり、オービスがストップ高でよりプレゼンスを高めているだけに、人気が本格化する可能性もあると提案したい。6月のFOMCまで相場全体の方向感が不確かななか、逆に健闘してくれるかもしれない。(本紙編集長・浅妻昭治)

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