【どう見るこの相場】「閑散相場」か「サマーラリー」か「巣ごろもり投資」関連の証券株に先取り可能性

どう見るこの相場

 「これで怖いものなし」と多くの投資家が一瞬、確信したはずだ。前週週初の4日にキッコーマン<2801>(東1)がストップ高し、スズキが300円超高と続急伸するのを目にした瞬間である。キッコーマンは、発表した今2020年3月期第1四半期(2020年4月~6月期、1Q)業績が、減益転換したが市場コンセンサスを上回ったと評価され、スズキは、純利益が95%減益となったが、よくも黒字を計上してくれたとポジティブに買われた結果だ。

 折から発表が本格化した1Q業績全般は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で減益・赤字転落会社の続出が懸念されていたが、業績悪は、キッコーマンやスズキのように心配したほどではなく、むしろ悪材料出尽くし・織り込み済みになるとすれば、例年「夏枯れ」とされてきた8月相場が、「サマーラリー」を繰り広げる可能性も強まったと期待された。

 ところがマーケットは気まぐれである。続いて1Q決算を発表したソニー<6758>(東1)が、ゲーム事業が好調で自己株式取得も同時発表したことで年初来高値8838円まで上値を追ったが、上値が重くなった途端に急落し長大な陰線包み足を示現してしまったのである。大天井打ちのシグナルである。連れて市場も浮遊し始めて方向感を喪失し、週後半には東証第1部の売買代金が、活況の目安となる2兆円を割る日も出てきた。

このままでは8月相場は、3連休明けに357ドル高と7日続伸した米国市場への感応度が限定的となり取り残されしまうのではないか、本当に例年通りの夏枯れ相場となるのではないかと心配になる。しかも新型コロナウイルス感染症の1日当たりの全国の新規感染者数は、過去最高更新が続き、お盆休み恒例の帰省も、菅義偉官房長官と西村経済財政・再生担当大臣、地方自治体の一部首長の判断がそれぞれ「マッチ・ポンプ」ほどに相反し、「Go To帰省」か「Not Go To帰省」かは、帰省客個々の自主判断に「丸投げ」されている。

 民族の大移動といわれる中国の今年1月25日の「春節」(旧正月)は、結果的に中国の海外観光客が、新型コロナウイルスを世界的にバラまく悪しきイベントとなったことを思い起こせば二の足を踏むことを避ける帰省自粛となるケースも多そうで、現に航空会社やJR各社の旅客数は、例年通りの満席御礼とはなっていない。となるとこちらも方向感が定まらず警戒感ばかりが強まりマーケットには追い討ちになる。相場格言は、「閑散に売りなし」と教えてくれるが、逆に「閑散に売りあり」も心配になる。

 「閑散に売りなし」か「閑散に売りあり」か、あるいはひょっとして「閑散に買いあり」のサマーラリーか、先行きを示唆してくれそうな銘柄群がある。証券株である。証券株は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した「第1波」の今年3月に先んじて逆行高、その後の相場V字反騰をリードしており、この再現があるかどうかウオッチする必要があるということである。

 今年3月の逆行高は、「三密」回避による外出自粛、テレワーク拡大で在宅の個人投資家が大挙して市場進出、海外投資家の売り越しでコロナ・ショック安が長引くなか、新型コロナウイルス関連株や新規株式公開(IPO)株などに果敢に攻勢を掛けて逆行高させ連戦連勝となり、これが証券各社の受入手数料の急増として株価に先取りされた結果である。実際に7月中旬から下旬にかけて発表された証券各社の1Q業績は、一部を除いて大幅黒字・増益転換して着地した。まさに「巣ごろもり投資」関連の好業績株である。

 8月相場の相場センチメントは、今年3月と相似形である。盆休みを「Not Go To帰省」の在宅とする個人投資家が、成功体験に裏打ちされ、折からの米国市場の活況も追い風に再び「巣ごもり投資」で市場進出してくるムードが高まるかもしれず、証券株の株価動向がこのシグナルとして注目されるわけだ。そこで今週の当コラムでは、値ごろ妙味がありPBRが軒並み1倍割れとなっている証券株は、「閑散に買いあり」となるか取り上げることとした。かつて証券マンは、株価が急騰すれば昼食に「うな重」を奮発し、翌日に株価暴落となれば白飯に梅干し一つの「日の丸弁当」に甘んじて当たり前とする変わり身の早さを身上としていたとされたが、このしたたかなDNAの残る証券界の夏場のひと働きも期待したい。

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