JSPは売られ過ぎ感、22年3月期横ばい予想だが保守的

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進している。22年3月期は原油価格上昇などを考慮して営業・経常減益予想としているが保守的だろう。上振れを期待したい。なお6月23日に、韓国のグループ企業で21年3月発生した火災に関して、第1四半期に特別損失1億27百万円を計上すると発表した。保険金による特別利益は金額確定段階で計上予定としている。株価は年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■発泡プラスチック製品の大手

 発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。

 21年3月期セグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業58%、その他5%、営業利益構成比(調整前)は押出事業41%、ビーズ事業57%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。

 なお20年12月には、米国子会社JSP International Groupの電子線架橋ポリエチレンシート事業について、需要拡大が見込めず生産効率改善も進展しないため撤退して会社清算(21年6月末予定)すると発表している。

■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進

 長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
 
 また21年4月公表の新中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。

 基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。

 自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。

 省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。

 サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。

■22年3月期営業・経常減益予想だが保守的

 22年3月期の連結業績予想(収益認識に関する企業会計基準第29号を適用するため21年3月期との比較は非掲載)は、売上高が1130億円、営業利益が50億円、経常利益が52億円、親会社株主帰属当期純利益が34億円としている。配当予想は21年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)である。

 21年3月期との単純比較で見ると売上高は10.1%増収、営業利益は3.6%減益、経常利益は5.8%減益、当期純利益は特別損失が一巡して12.7%増益の見込みとなる。

 押出事業は販売数量増加で4.3%増収だが原料価格上昇で14.6%減益、ビーズ事業は販売数量回復に原料価格上昇に伴う販売価格見直しも寄与して14.2%増収で7.0%増益、その他4.3%増収で4.2%増益の計画としている。

 下期に向けて経済活動の正常化が進むことを想定して2桁増収だが、原油価格上昇や固定費増加などを考慮して営業・経常減益予想としている。ただし保守的だろう。上振れを期待したい。なお6月23日に、韓国のグループ企業で21年3月発生した火災に関して、第1四半期に特別損失1億27百万円を計上すると発表した。保険金による特別利益は金額確定段階で計上予定としている。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。6月23日の終値は1586円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS114円06銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2767円26銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約498億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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