【編集長の視点】東証第1部に直接上場のデクセリアルズの初値は1550円、公開価格を50円下回る

編集長の視点

デクセリアルズ<4980>(東1)が、きょう29日に東証第1部に新規株式公開(IPO)された。東証1部への直接上場は、今年6月25日IPOのメニコン<7780>(東1)以来で、公開価格は1600円、公開株式数は、公募がなく株式売出しのみの5404万9000株となっている。

初値は、9時6分に公開価格を50円上回る1550円で初値をつけ、その後は、1530円まで下ぶれなどほぼ初値水準での売り買い交錯となっている。今年4月21日上場のシーアルイー<3458>(東2)以来の公開価格割れの初値形成となった。相場環境が、中国景気の減速懸念などアゲインストで、きょう29日の日経平均株価が寄り付き後に58円安と続落するなか、同社の資金吸収額が、860億円超と大規模IPO案件となっていることも響いた。ただ、下値には、公開価格のPERが13倍台、年間配当利回りも1.79%と割安なことを評価する買い物も入っている。

■スマホ向けディスプレイが続伸しビジネスモデル転換も寄与

同社は、前身がソニー<6758>(東1)の元化学子会社で東証2部に上場していたソニーケミカルで、ソニーの構造改革に伴い2000年に上場廃止し、2012年に日本政策投資銀行とユニゾン・キャピタルに買収された。2001年からタッチパネルの製造を開始し、液晶パネルの部品を製造、ディスプレイとICチップなどを接着する異方性電導膜では世界シェアが4割強と日立化成<4217>(東)とトップを争うなど高技術力を誇っている。

業績も、スマートフォン、タブレットPC、ノートPC向けの中小型ディスプレイが続伸し、前期に光学ソリューションカテゴリーでタッチパネルの部材仕入れから製造・販売を行う事業から、顧客のディスプレイメーカーのパネル貼り合わせ工程のソリューション提供へビジネスモデルを転換したことも寄与して好調に推移している。今2016年3月期業績は、売り上げ756億円(前期比15.4%増)、営業利益119億円(同23.8%増)、経常利益115億円(同16.5%増)、純利益70億円(同34.7%減)と予想している。

純利益が減益転換するのは、前期計上の特別利益が一巡し、前期に計上した減損損失などの特別損失などによる税負担の軽減が今期は剥落するためで、年間配当は、前期と同様の27.5円を予定している。

■PER13倍台と割安で投資鉄則の「小さく産んで大きく育てる」通りに上値挑戦

株価は、初値水準で売り買い交錯となっているが、投資採算的にPER13倍台、配当利回りは1.79%と割安であり、東証1部上場に伴う東証株価指数(TOPIX)参入によるTOPIX連動型のファンドの組み入れなどの好需給材料も控えているだけに、IPO株投資の投資鉄則の「小さく産んで大きく育てる」通りに公開価格奪回から上値挑戦が続こう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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