【どう見るこの相場】株価は内閣支持率に左右されない!岸田政権が目指すべき物価高対策と財源確保

どう見るこの相場

■割り負け建設株に浮上チャンス

 変われば変わるものである。2007年以降の衆議院と参議院の多数派が異なるねじれ国会下では、世論調査の内閣支持率が10%下がると、日経平均株価は1000円下ぶれるとの計算式が喧伝されていた。ところが、前週7月24日付けの読売新聞で報道された岸田文雄内閣の支持率(7月21日~25日調査)は、内閣発足後最低の35%と前回6月調査から6ポイント落ち込んだものの、同日24日の日経平均株価は、396円高と3営業日ぶりに急反発したのである。この内閣支持率は、この直前に発表された毎日新聞の調査では、5ポイント悪化の28%と落ち込み「30%割れは退陣の危険ライン」とされてもいた。かつての計算式通りなら500円~600円は下落するはずが、逆行高したことになる。

 その後も、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が、7月27日に政策金利引き上げ再開を発表し、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、14日ぶりに反落したが、前週末28日に27日の急落幅の7割超をカバーした。日本銀行も、28日に大規模金融緩和策のうち長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の上限を0.5%から1%まで引き上げることを容認する柔軟化方針を決定し、緩和策縮小として取引時間中には為替は1ドル=138円台まで円高・ドル安となり、日経平均株価も一時853円安と今年最大の下げを記録したが、引けてみれば131円安と下げ幅を大幅に縮小し、7月24日の株価水準をキープした。

 内閣支持率の計算式違い・陳腐化については、永田町サイド、兜町サイドのそれぞれの事情が分析されているようであるが、こうなると岸田文雄首相には、株高のアローアンスがある間に夏相場への二の矢、三の矢のフォローを期待したくなる。きよう31日付けの日本経済新聞の世論調査報道では、内閣不支持率は51%で増減がなかったものの、支持率は40%と1ポイント上昇したとされており、小さな変化も僥倖に政策総動員である。

 今回の日銀の柔軟化策やようやく決着した最低賃金引き上げなどで消費者物価が日米で逆転した物価高対策に前進を示したが、防衛力強化、子育て・少子化対策の財源問題、トラブル続きのマイナンバーカード処理、福島原発の処理水放出問題、大阪・関西万博のパビリオンの着工遅れなどなどにメドをつけるべく、政策の継続性、非連続性、時にはサプライズも混じえて「聞く力」をアピールするチャンスがあるはずである。折から新聞辞令によると、今年9月中旬に予定していた内閣改造・党役員人事を8月末に前倒しするともいわれ、8月末は各省庁の令和6年度予算の概算要求の締め切り期限となっており、舞台も整っている。

■建設株は高配当利回りで市場の注目度高まる

 そこで今週の当コラムでは、政策関連の出遅れセクターとして建設株に注目することにした。ただし、この建設株は、2009年の政権交代時には旧民主党が政治キャンペーンした「コンクリートから人へ」とは真逆で「コンクリートも人も」である。2011年の東日本大震災以来の国土強靭化計画はもちろん、歴史的は豪雨による相次ぐ激甚災害の復旧・復興工事、働き方改革による建設技術者不足が懸念される「2024年問題」など政策の継続性と非連続性が試されるプロジェクトが目白押しである。

 この建設株は、業種別PERでは13倍と東証プライム市場全業種平均の15倍台を下回っているものの、全33業種の業種別ランキングでは第15位と中位に位置し超割安株とはなっていない。業態そのものも、オールドエコノミーで、しかも、前週末28日に近縁業種の金利敏感の不動産株が軒並み安となったことも気掛かりではある。しかし、個々の銘柄の配当利回りに絞ると、東証プライム市場の配当利回りランキングのトップ10位のなかに5銘柄もがランクインするなど市場の注目度が高まる資格は充足している。高配当利回りのバリュー株は、これまで海運株、大手商社株の大化けや、今回の日銀の柔軟化策により銀行株の軒並み高が続いてきたが、建設株にもその素地があることになる。

 また「モノ言う株主」との攻防を続ける銘柄も少なくなく、年初来高値水準に位置する銘柄も少なくない。周辺業種のセメント株、コンクリート二次製品株、建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)株などにも広く網を張り8月の猛暑・残暑相場を乗り切りたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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