【株式市場特集】証券・銀行セクター株に焦点、インカムゲインとキャピタルゲインを含む投資戦略

■投資と貯蓄の狭間で・・・

 岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指しているが、メガバンクと地銀が預金金利を大幅に引き上げたことで、家計の資金が再び貯蓄に流れる可能性がある。市場では、証券株と地銀株が高値を更新し、投資と貯蓄の間で資金が行き来している。この状況を受けて、今週の特集は最高値を更新した銘柄のうちでもなおPER・PBR評価や配当利回り基準で割安水準にある証券・銀行の両セクター株に焦点を当て、インカムゲインとキャピタルゲインを含む投資戦略を検討する。

■3Q業績が大幅増益転換、大幅黒字転換し期末配当を大幅増配する証券株が続々

 証券株は、期末接近とともに未定としてきた期末配当を続々と発表し、前期に比べて大幅増配を予定している。前週末22日に増配を発表した銘柄を時系列的にあげると丸八証券<8700>(東証スタンダード)、アイザワ証券グループ<8708>(東証プライム)、岩井コスモホールディングス<8707>(東証プライム)と続いた。丸八証券の年間配当は80円(前期実績30円)で年間配当利回りは5.17%、アイザワ証券グループは同じく39円(同26円)で3.32%、岩井コスモ証券グループは120円(同80円)で5.02%と市場平均を大きく上回る。PERは、市況産業の常として年間予想業績を公表せず算出が不可能だが、PBRは1倍を割っている。このほか取引時間中には日本取引所グループ<8697>(東証プライム)が、業績の再上方修正と増配、東証の大家さんの平和不動産<8803>(東証プライム)が増配を発表し、平和不動産の年間配当166円(同104円)の利回りは、4.17%となる。

 このほか証券株ではすでに5銘柄が、期末配当の増配などを発表しており、配当利回りの高い順にあげると年間配当を110円(同80円)とした極東証券<8706>(東証プライム)の6.19%以下、丸三証券の5.19%、水戸証券の4.63%、松井証券の4.58%、いちよし証券の3.93%となる。証券各社は例年、今年4月末の本決算発表に先立ち4月中旬までにその本決算の速報値を発表してくるが、今期第3四半期決算が大幅増益や大幅黒字転換して着地しており、本決算も同様の好決算が期待されるだけに株価押し上げ材料になるはずだ。バブル相場時につけた上場来高値からはまだ3分の1、4分の1水準にとどまっている銘柄も多いだけに、夢をもう一度となるかもしれない。

■昨年来高値更新も業績上方修正・増配・自己株式取得などを材料に銀行株はまだ割り負け

 銀行株は、前週末22日に32行が昨年来高値を更新し、東証プライム市場の値上がり率ランキングのトップ50に6行がランクインするなど人気セクター株となった。なかでも足元で今期業績を上方修正し期末配当の増配を発表した銘柄の感応度は高く、例えば南都銀行<8367>(東証プライム)は、貸出利息や役務取引手数料の増加と与信費用の減少で今期純利益を上方修正して前期比2.53倍と大幅増益となり、配当も年間114円(前期実績113円)と連続増配を予定し、同時期の昨年3月に外国債券を中心にポートフォリオを再構築し一部損失処理をして前期業績を下方修正したのとは様変わりとなっている。同様に3月に入って今3月期業績を再上方修正して増配した八十二銀行<8359>(東証プライム)は昨年来高値に肉薄し、今期配当の増配と自己株式消却を発表した南日本銀行<8554>(福証)も年初来高値を更新した。

 前週末22日に昨年来高値を更新した32行のうち業績の上方修正組はちゅうぎんフィナンシャルグループ<5832>(東証プライム)、群馬銀行<8334>(東証プライム)、百十四銀行<8386>(東証プライム)、四国銀行<8387>(東証プライム)で、百十四銀行と四国銀行は増配も同時発表した。増配組はこのほかいよぎんホールディングス<5830>(東証プライム)と千葉銀行<8331>(東証プライム)で、自己株式取得・消却組は、めぶきフィナンシャルグループ<7167>(東証プライム)、第四北越フィナンシャルグループ<7327>(東証プライム)、滋賀銀行<8366>(東証プライム)と続き、第四北越FGは増配との同時発表である。投資採算的にもなお割安水準でとくにPBRはいずれも大きく1倍を下回っている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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