【どう見るこの相場】円安・ドル高は「悪夢」か「好機」か?株価・景気・企業業績への影響を徹底分析!

■まさか「円安不況」?!「安いニッポン」買い関連株は順張り・逆張りともダブル選択肢

 「短期は需給、中長期はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)」は、株式相場だけではなく、どうも為替相場にも通用するらしい。ゴールデンウイーク中に為替相場が、1ドル=160円台から1ドル=151円台まで短期間のうちに乱高下し、足元でもなお円高、円安の方向感が定まらない。これは連休中に政府・日銀が、2度にわたり5兆円、3兆円の円買いの覆面介入を行った需給要因によるものと市場観測され、その後も円買い介入が警戒されているためだ。一方、ファンダメンタルズは、連休前・連休中の日米中央銀行の金融政策決定会合では、ともに現状維持と決定され、日米金利格差は拡大したままで、マネーが金利の安い通貨から高い通貨に向かう市場原理からも、トレンドとして円安・ドル高が続くとマーケットではみられている。前週末にFRB(米連邦準備制度理事会)高官2名のタカ派発言が伝えられたことも尾を引きそうだ。

■円安メリットとデメリットは?兜町証券マンも困惑!米金利差拡大が招く経済の明暗

 円安・ドル高は、為替差益の発生を通じて企業業績を押し上げ株価にはポジティブな材料とされる。トヨタ自動車<7203>(東証プライム)の前期の営業利益が、5兆円を上回ったことなどがこの代表である。ところが、昨今は、その一方で輸入物価の上昇により物価を押し上げ、消費景気への下押し圧力となるとして必ずしも大歓迎とはいえなくなった。「良い円安」と「悪い円安」との混在であり、兜町の証券マンは、かつては株式ブーム時は毎日、鰻丼を奢り、ショック安時には一転して日の丸弁当を厭わない変わり身の早さを身上としたとされてきたが、この遺伝子は、日本の消費者に色濃く受け継がれ、物価が上昇すれば途端に、節約志向、生活防衛のためにサイフの紐を固く結ぶことを日常茶飯事としている。

 日本は、何度も円高・ドル安に見舞われ、そのたびごとに「円高不況対策」の策定を強いられた。しかし、このまま推移したら「悪い円安」に傾き、まさかの「円安不況」にジワジワと首を絞められ、「円安不況対策」に追い込まれるかもしれないではないか。日米中央銀行の金融政策決定会合は、このあともともに6月、7月、9月と開催予定であり、植田和男日銀総裁とパウエルFRB議長が、ハト派、タカ派のいずれを選ぶか、11月の米国の大統領選挙も控え短期、中長期とも円安・ドル高トレンドの継続の可能性もある。

 もちろん円安・ドル高が、追い風になるもののある。その代表は、インバウンド(訪日旅行)である。今年3月の訪日外国人旅行客は、前月同月比69.5%増の308万1600人と月間で初めて300万人を上回って過去最高となった。コロナ禍前は爆買いとしてインバウンド需要を牽引した中国からの訪日客は、まだピークの6割程度にとどまっているが、訪日客が、円安・ドル高メリットで値上げをものともせず高額商品やブランド品を買い込み、これが百貨店、外食店舗、アパレル各社などにプラスとなり月次売り上げと業績を押し上げている。

 円安・ドル高メリットは、インバウンドだけにとどまらない。「円キャリートレード」の「安いニッポン」買いも、この一翼を担う。円キャリートレードは、低金利通貨の円を借り入れて外貨に転換して金融商品や実物資産に投資する運用手法であり、例えば米国の著名投資家ウオーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは、相次いで円建て債券を発行している。日本株はもちろん、不動産などもこの運用対象に浮上する。

 そこで今週の当コラムでは、円安・ドル高メリット株に注目することにした。高額商品・ブランド品関連の百貨店株や化粧品株、円キャリートレンド関連の不動産株、証券株などである。年初来高値水準にある銘柄も多いが、これから続く日米中央銀行の金融政策決定会合を横目にみながら順張り・逆張りのタイミングを計れば、パフォーマンスはいや増すはずである。「悪い円安」を「良い円安」にシフトさせるチャンス到来となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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