マルマエは下値固め完了、受注回復傾向で25年8月期の収益も回復基調

 マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開し、成長戦略として消耗品の拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営などを推進している。24年8月期の業績予想については9月12日付で上方修正し、前回予想に比べて減収減益幅が縮小する見込みとなった。受注が回復傾向であり、25年8月期の収益も回復基調だろう。株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。なお10月11日に24年8月期決算発表を予定している。

■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工を展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開し、半導体・FPD製造装置の真空パーツを作るノウハウ、同業他社に比べて高い生産性・低コスト、急変動する半導体・FPD市場に柔軟に対応できる設備力、ワンストップ受注に対応する多工程生産能力などを強みとしている。なお作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。

 23年8月期の全社合計受注高は22年8月期比43.8%減の51億67百万円(半導体分野が52.4%減の33億46百万円、FPD分野が47.9%減の7億61百万円、その他分野が51.3%増の10億59百万円)で、全社合計売上高は20.0%減の68億68百万円(半導体分野が29.0%減の45億34百万円、FPD分野が49.8%減の7億74百万円、その他分野が208.7%増の13億74百万円)だった。半導体分野とFPD分野は市場停滞の影響で受注・売上高とも減少した。その他分野は太陽電池製造装置用部品が受注・売上高とも急拡大した。

■シェア拡大やESG経営を推進

 長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指し、中期事業計画では成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営などを推進している。

 なお中期事業計画の目標値については、市場環境変化に伴って最終年度を26年8月期(従来は25年8月期)に変更し、最終年度26年8月期売上高140億円、営業利益42億円、資産ベースROIC21%、負債ベースROIC18%、配当性向35%以上、年間最低配当額20円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。

 売上拡大(22年8月期85.9億円から26年8月期140億円へ+54.1億円)戦略として、半導体分野は既存顧客からの受注拡大で+22.8億円、新規顧客獲得(獲得済の新規顧客2社からの量産受注拡大など)で+27.5億円、FPD・その他分野(FPD分野はEBW拡大、その他分野は太陽光発電関連や人工衛星関連の拡大など)で+3.8億円を目指す。なお23年8月期の消耗品売上比率は半導体分野が62.2%、FPD分野が19.6%だった。

 設備投資計画(CFベース)については、増産投資およびカーボンニュートラルに向けた太陽光発電投資などにより、24年8月期が10億円、25年8月期が24億円、26年8月期が18億円としている。主な投資は、24年8月期は開発投資やES向上に向けた社員食堂への投資、25年8月期と26年8月期は新工場建設(総額約15億円)としている。減価償却費(製造原価)の見込みについては、24年8月期が8.97億円、25年8月期が約10.4億円、26年8月期が約11.8億円としている。

 また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。自社の再生可能エネルギー活用によってCO2削減を推進し、2030年に50%削減、2050年に100%削減を目指す。さらに人材力最大化に向けて、6つの向上施策(多様化の推進、人材戦略の推進、誰もが働ける職場環境の整備、人事制度改善、育成プラン作成、育成計画推進)を推進する方針だ。そして21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、23年4月には統合報告書「マルマエレポート」を発表している。

■24年8月期は上方修正して減収減益幅縮小、25年8月期収益回復基調

 24年8月期の非連結業績予想(3月28日付で下方修正)は、9月12日付で上方修正して、売上高が23年8月期比30.9%減の47億49百万円、営業利益が82.0%減の1億55百万円、経常利益が94.7%減の42百万円、当期純利益が95.9%減の29百万円とした。配当予想は据え置いて、23年8月期比6円減配の30円(第2四半期末10円、期末20円)としている。

 前回予想(3月28日付で下方修正して売上高が46億80百万円、営業利益77百万円、経常利益が39百万円の損失、当期純利益が34百万円の損失)に対して、売上高を69百万円、営業利益を78百万円、経常利益を81百万円、当期純利益を63百万円それぞれ上方修正し、前回予想に比べて減収減益幅が縮小する見込みとなった。

 売上面は、半導体分野における顧客内の在庫整理進展によって消耗品の受注が拡大し、FPD分野においてはG8 OLED向けの受注が拡大した。利益面は、売上高の上振れに加え、設備投資や人員数の抑制なども寄与した。なお8月に襲来した台風10号の影響により工場稼働率が想定ほど伸びていないため、受注損失引当金約40百万円および棚卸評価損の増加を見込んでいる。

 なお第3四半期累計は、売上高が前年同期比37.8%減の33億44百万円、営業利益が96.9%減の24百万円、経常利益が58百万円の損失(前年同期は7億32百万円の利益)、そして四半期純利益が51百万円の損失(同5億09百万円の利益)だった。半導体分野における市場停滞の影響で大幅営業減益だった。

 全社の受注高は11.2%減の35億92百万円(内訳は半導体分野が3.0%減の26億68百万円、FPD分野が106.2%増の8億73百万円、その他分野が94.2%減の50百万円)で、分野別売上高は半導体分野が36.1%減の24億77百万円、FPD分野が23.2%増の7億38百万円、その他分野が96.2%減の28百万円だった。

 半導体分野は大幅減収だが、在庫調整が進展していることに加え、新規顧客向けの売上も貢献して売上高が底打ち感を強めている。FPD分野はOLED向けの好調で回復基調となっている。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注遅延が影響した。利益面は売上減少と稼働率低下で大幅営業減益だった。ただし受注損失引当金の減少(前期末比81百万円減少)も寄与して回復基調となっている。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高11億17百万円で営業利益22百万円の損失、第2四半期は売上高9億23百万円で営業利益56百万円の損失、第3四半期は売上高13億04百万円で営業利益1億02百万円だった。第3四半期は売上高が回復に転じて営業利益も黒字転換したため、第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。受注が回復傾向であり、25年8月期の収益も回復基調だろう。

■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象としてクオカードを贈呈している。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。9月25日の終値は1517円、前期推定PER(修正後の前期予想EPS2円29銭で算出)は約662倍、前期推定配当利回り(会社予想の30円で算出)は約2.0%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS591円25銭で算出)は約2.6倍、そして時価総額は約198億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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