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【小倉正男の経済コラム】いまさらTACOれないトランプ大統領 原油狂騰、「戦略」の誤りは「戦術」で取り返せない
- 2026/3/23 18:50
- 小倉正男の経済コラム

■2月は生産者物価高騰、インフレが顕在化
米国の2月生産者物価指数(PPI)は前月比0.7%上昇。事前予想は0.2%程度が見込まれていたが、大幅に上回る結果になっている。2月生産者物価は前年同月比では3.4%、これも異常といえる上昇ぶりである。(米国労働省・3月18日発表)
生産者物価とは、日本でいう卸売物価であり、インフレの先行きを占う先行指標にほかならない。この2月PPIは、25年7月の前月比0.9%アップ(前年同月比3.3%上昇)以来の高騰である。
前年7月はいよいよトランプ関税による物価上昇発現かといわれたものである。しかし、その後は小康を得ていたが、ここにきてPPIが上昇に転じている。
ホテル、モーテルなど宿泊サービスが上昇している。とりわけ、富裕層の旅行需要で高級ホテル宿泊費が値上がりしている。富裕層の需要は大幅減税政策延長が寄与している。人件費、光熱費高も見逃せない。食品価格の上昇が止まらない。野菜卸売価格の大幅高騰が続いている。天候不順に加えてガソリンなど燃料費、輸送費高騰などが直撃している。
■原油90~100ドルに狂騰、インフレ極大化で利下げ期待は吹き飛ぶ
2月PPIは、それでも米国・イスラエルのイランに対する戦争開始以前のデータである。WTI原油先物価格90~100ドルという狂騰価格によるインフレはまだ反映されていない。3~4月の消費者物価(CPI)には90~100ドルの原油価格の影響が織り込まれる事態となる。3~4月は悪夢のような物価高騰を覚悟する必要がある。
3月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金利(FF金利誘導目標3.50~3.75%)据え置きが決定されている。FOMCメンバー12人のうち11人が金利据え置きに賛成。唯一反対したのはトランプ大統領が送り込んだミラン理事、相変わらず利下げを主張している。
雇用低調が定着している。だが、世界的に不評で米国内でも支持が高まらないイランへの戦争でインフレは凄まじいものになりかねない。トランプ大統領が言葉を選ばず要求している利下げなどインフレ狂騰リスクからあり得ない状況となっている。
■「戦略」の誤りを「戦術」で取り返すことはできない
結局のところ、「戦略」を誤れば「戦術」をいくら尽くしても取り返しがつかない。ここはTACO(トランプはいつも尻込みする)ることが生き残り策になる。「戦術」に走らず、すっきり手を引くのが常道だ。クライシス・マネジメントとはそういうものである。
TACOを使う時期を失って、「戦術」による挽回策に賭ければ賭けるほど、望まない事態に嵌まり込むことになりかねない。
ホルムズ海峡が事実上封鎖されている。原油供給は止まり原油価格が狂騰――。トランプ大統領は、イラン原油輸出の要衝・カーグ島、ペルシャ湾沿岸部に海兵隊による強襲上陸戦を強行する構えをみせている。
直近ではホルムズ海峡封鎖を48時間以内に解除しなければイラン国内の原発など発電施設を攻撃するとSNSに書き込んでいる。短期で終結したいための強硬策にみえるが、焦りが垣間見られる。
トランプ大統領の頭の中を占めているのは11月中間選挙の行方である。引っ込みがつかずズルズルと長期戦に嵌まり込むリスクが高まっている。そうなればトランプ大統領にとっては悪夢、イランとしては負けないことが勝利という構図(フェーズ)に移行することになる。(経済ジャーナリスト)
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)






















