世界初、非破壊でビンチョウマグロの脂のりを判定するAI検査装置が登場

■従来の目視検査から80%の省力化を実現、「ビントロ」の流通拡大に貢献

 静岡発スタートアップのソノファイは4月9日、富士通<6702>(東証プライム)、イシダテック、東海大学と共同開発した冷凍ビンチョウマグロの脂のりを判定するAI搭載自動検査装置「ソノファイT-01」を2025年6月に販売開始すると発表。同装置は富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術として開発された超音波解析AI技術を活用し、世界で初めて非破壊で冷凍ビンチョウマグロの脂のり判定を実現した。目視検査に頼ることなく自動で高精度な判定が可能となり、従来の脂のり判定から最大80%の省力化や作業効率化が見込まれる。これにより全数検査が実現し、脂ののった高付加価値商品「ビントロ」の流通量増加に貢献する。

 近年、日本食ブームを背景にマグロ類の世界漁獲高は20年で25%ほど増加しており、国際的にマグロの品質要求も年々向上している。ビンチョウマグロは年間を通して安価で安定して入手できることから、脂がのった個体を中心に外食産業での需要が高まっている。従来の脂のり確認作業は「尾切り選別」と呼ばれる工程で、冷凍マグロの尾部分を切断して解凍し、職人が目視で判定していた。この方法は多くの人手と時間を要し、判定にばらつきが生じることや熟練職人の不足から、全数を正確に選別することが困難だった。この課題を解決するため、東海大学と富士通が2022年4月より共同研究を開始。2023年12月にビンチョウマグロを対象とした検証で尾切り選別以上の正解率での脂のり判定に成功した。その後、イシダテックが装置のハードウェア開発を行い、ソノファイが富士通から技術供与を受けたAI技術を実装して商品化に至った。

 「ソノファイT-01」の特長は、低周波超音波を用いて冷凍状態のまま非破壊で検査できる点と、富士通開発の超音波解析AI技術による高精度な判定能力にある。従来の手作業に比べて検査時間が最大80%削減され、1本あたり最短12秒程度に短縮。操作に必要な人員も1名程度と大幅に削減できる。これにより大量の冷凍ビンチョウマグロをスピーディにスクリーニングでき、職人の負担軽減と選別業務の効率化、検査コスト削減と人手不足解消に貢献する。開発には東洋冷蔵も参加し、2024年1月から3月にかけて初回の実証実験を実施。2025年2月には商用利用を想定した実証実験を行い、実際の加工現場での有効性を確認した。

 開発各社は2025年6月10日から13日まで東京ビッグサイトで開催される「FOOMA JAPAN 2025」に本装置を出展予定。今後は脂のりだけでなく鮮度や硬さ、粘り気といった身質判定機能を追加するとともに、対応魚種も拡大していく計画だ。また装置内で魚の体長や体重計測ができるようにすることで水産資源管理への貢献も目指す。さらにイシダテックが構想中の水揚げ直後の冷凍カツオの選別・評価システムにも本装置を活用し、大規模水揚げ漁港での瞬時品質選別による省力化や付加価値向上を目指している。静岡県の鈴木康友知事は「これまで見過ごされてきた良質なマグロを発掘し、価値ある水産商品を生み出すことで水産業界の活性化につながる」とコメント。東洋冷蔵の加藤得裕執行役員も「尾切り選別の工程で内部の脂のりを精度高く把握できる画期的な技術」と期待を寄せている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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