2035年の家計支出は月36万円超に、「衣」より「食」へ──変わる消費の重心

■食費が家計の3割超を占める時代へ

 帝国データバンクの調査によると2035年の家計支出は、共働き世帯の増加や健康志向の高まりを背景に、月36万6,420円に達する見通しとなった。これは2024年比で13.5%の増加であり、年平均で1.2%の伸びとなる。特に「食料」への支出が大きく、消費支出全体の32.5%を占めるまでに上昇する見込みだ。この変化を、世帯構成や人口動態を反映した「ベイズ型コウホート分析」を用いて導き出している。

■健康志向・共働き世帯の増加が支出構造を変える

 食料支出は、2035年に月11万9,255円へと拡大すると予測される。最も支出が多いのは「外食」で2万4,937円、次いで「調理食品」「野菜・海藻」と続く。共働き世帯の増加によって中食・外食のニーズが高まり、加えて環境・人権への配慮、健康志向、そして食料品価格の上昇が重なり、食分野全体の消費が増加している。これにより、食関連産業にとっては新たな市場機会が広がることが示唆されている。

 一方で、光熱費など生活インフラへの支出も拡大する傾向にある。2024年比で約36%増となる3万4,628円が見込まれており、省エネ製品や再生可能エネルギーなど高付加価値のサービスへの需要増が予測される。反対に「被服及び履物」は全体として減少傾向にあり、2035年には月1万125円まで下がる見通しだ。特に世帯主年齢40歳以上での減少が顕著であるが、30代前半の世帯では増加が続く見込みであり、若年層をターゲットにした衣料ビジネスには一定の成長余地が残されている。

 同予測では、総務省の家計調査や国立社会保障・人口問題研究所による将来推計を基に、家計支出の金額データを年齢・時代・世代の3軸で解析した。これにより、生活様式の変化が支出行動にどう反映されるかを可視化している。実際の家計支出は、世帯人員数や構成によって大きく左右されるため、モデルでは「一人当たり支出額」に世帯人員数(二乗根)を掛ける形で世帯支出額を算出。今後の政策立案やビジネス戦略において、こうしたデータに基づく予測が重要性を増すといえる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る