
■上場13社客室単価が前年比12.6%増、需要拡大で上昇続く
東京商工リサーチは7月28日、訪日外国人の増加に支えられた客室単価と稼働率の上昇傾向が続いているとする調査結果を明らかにした。2025年3月期における上場ホテル運営13社・15ブランドの平均客室単価は1万6,679円で、前年同期比12.6%の上昇となった。稼働率は全ブランドで70%超、うち9ブランドが80%を超えるなど高水準を維持している。インバウンド需要は急増しており、日本政府観光局によれば、2025年上半期の訪日外国人数は2,151万8,100人と、前年同期比で21.0%増に達し、過去最速で2,000万人を突破した。
2021年同期の平均客室単価は7,755円であったことから、2025年同期はコロナ禍時と比較して114.5%増と、2倍以上の水準にある。東急不動産ホールディングスが展開する「東急ステイ」は、前年比20.4%の値上げで最も高い上昇率を記録した。特にビジネスホテル8ブランドにおいては、2021年3月期の稼働率45.8%・客室単価6,180円に対し、2025年同期は稼働率81.0%・単価1万3,930円と大幅な回復を示した。インバウンド消費も堅調で、2024年4〜6月期の訪日外国人による旅行消費額は2兆5,250億円に達し、宿泊費が38.5%を占めた。
今後も訪日客と国内旅行者の需要は旺盛に推移する見通しで、ホテル客室の奪い合いが続くとみられる。一方で、人件費やエネルギーコストの上昇、人手不足などホテル運営を巡る課題は深刻化しており、サービスの質と安定供給の両立が求められている。供給が追いつかない需給ミスマッチが客室単価のさらなる上昇を招く可能性もあり、ホテル業界はまさに今、質の維持と存在価値が問われる分岐点に立たされている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)