科研製薬は26年3月期1Q減益、通期減益予想据え置き

 科研製薬<4521>(東証プライム)の26年3月期第1四半期連結業績は、研究開発費の増加(ライセンス契約締結に伴う契約一時金支払)で減益だった。そして通期の減益予想を据え置いた。前期の一時的収益(ライセンス契約に基づく契約一時金収入)が剥落することに加え、主力のクレナフィン群やアルツの減収、研究開発費の増加等を見込んでいる。

■医療用医薬品・医療機器メーカー

 医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産事業を展開している。

 主要な医薬品・医療機器は、爪白癬治療剤のクレナフィン群、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、褥瘡・皮膚潰瘍治療剤のフィブラスト、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロック、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。

 23年8月には壊死組織除去剤ネキソブリッド(イスラエルのメディウンド社から導入、海外製品名NexoBrid)の発売を開始、24年3月にはエーザイ<4523>より医療用医薬品2製品(メリスロン、ミオナール)の日本国内での製造販売承認を承継する契約を締結した。24年5月には、静岡工場(静岡県藤枝市)内に農業薬品事業の発酵農薬原体製造工場を建設(着工25年11月、竣工27年7月、稼働開始27年11月予定)すると発表した。

■M&A・アライアンス

 M&A・アライアンス関連では、21年12月に国内バイオベンチャー企業のアーサム・セラピューティクス社を子会社化、23年3月にbitBiomeと感染症治療薬創製に関する共同研究契約を締結した。25年3月には米国Aadi Subsidiary(Aadi社)を子会社化した。Aadi社は希少疾病の「局所進行した切除不能/転移性の悪性血管周囲類上皮細胞腫瘍」の治療薬FYARROを販売している。

■開発パイプライン

 25年8月7日時点の主要な開発パイプラインの状況として、自社創薬・導入品ではアタマジラミ症を予定適応症とするKAR(アーバー・ファーマシューティカルズ社から導入、海外製品名Sklice)は第3相段階、難治性脈管奇形を予定適応症とするKP-001(自社創薬)は第3相段階、原発性胆汁性胆管炎を予定適応症とするKC―8025(シーマベイ・セラピューティクス社、現ギリアド・サイエンシズ社から導入、一般名Seladelpar、海外(米国)製品名Livdelzi)は第3相段階、尋常性乾癬を予定適応症とするESK-001(アルミス社から導入、25年3月に日本での皮膚科領域における開発、製造及び販売に関するライセンス契約締結)はアルミス社が日本を含む国際共同試験を実施しており第3相段階、固形がんを予定適応症とするKP-483(がん免疫療法、自社創薬)は第1相段階、末梢性神経障害性疼痛を予定適応症とするKP-910(自社創薬)は第1相段階、先天性副腎過形成症を予定適応症とするチルダセルフォント(スプルース・バイオサイエンシズ社から導入)は第1相段階である。

 その他の開発状況としては、遺伝性血管性浮腫を予定適応症とするセベトラルスタット(カルビスタ・ファーマシューティカルズ社(以下、カルビスタ社)から導入、25年4月に日本での販売に関するライセンス契約締結)については、ライセンス元のカルビスタ社が日本において製造販売承認を申請中であり、米国ではFDAの承認を取得(海外製品名Ekterly)した。

 軟骨欠損を伴う変形性膝関節症を予定適応症とする同種(他家)滑膜間葉系幹細胞由来三次元人工組織gMSC1(広島大学初のバイオベンチャー企業であるツーセル社から導入、25年6月に日本での共同開発・独占販売に関するライセンス契約締結)は第3相準備中である。ツーセル社が製造販売承認取得に向けた開発を実施する。

 アトピー性皮膚炎を適応症とするNM26については、24年5月に米国Johnson & Johnson(以下、J&J社)の関連会社であるスイスのシーラグ社と知的財産譲渡および販売提携オプション契約を締結し、J&J社が臨床試験を実施しており第2相段階である。

 三洋化成工業<4471>が開発した新規の創傷治癒材シルクエラスチン創傷用シート(医療機器)(24年10月に日本での販売に関するライセンス契約を締結)については、25年4月に三洋化成工業が薬事承認を取得した。

 海外導出では、爪白癬治療剤クレナフィンは爪白癬を適応症としてアルミラル社がイタリアで25年3月に製造販売承認取得、ドイツで承認申請中、AIM社が中国で第3相段階である。原発性腋窩多汗症治療剤のエクロックについては、韓国でドンファ社が原発性腋窩多汗症を適応症として承認申請中である。

 なお、次世代の経口2型炎症性疾患(アトピー性皮膚炎、喘息など)治療薬として前臨床段階にあるSTAT6阻害剤(開発記号:KP―723)を含むSTAT6プログラムについては、24年12月にグローバルにおける開発・製造および商業化に関する独占的ライセンスをJ&J社に許諾するライセンス契約を締結した。日本国内では科研製薬が本プログラムで開発される製品の商業化に関する権利を保持し、第1相試験完了まで進める。

 また24年11月にスイスのニューマブ社と、炎症性腸疾患を対象疾患とする新規多重特異性抗体医薬ND081に関する共同研究契約を締結した。ニューマブ社に対して契約一時金を支払うほか、非臨床および臨床開発(PoC試験まで)の資金提供と引き換えに特定の主要アジア地域におけるND081の商業化権を取得するオプション権を獲得する。非臨床および臨床開発の主要な実施主体はニューマブ社となる。

 25年8月には米国アストリア社と、遺伝性血管性浮腫の長期予防薬「ナベニバルト」(一般名)の日本での開発および販売に関するライセンス契約を締結した。契約一時金、上市時および販売マイルストン、売上に対するロイヤルティを支払うほか、アストリア社が実施している国際共同第3相臨床試験に関するグローバル開発費の一定割合を負担する。日本における承認申請および商業化活動は科研製薬が担う。

■26年3月期1Q減益、通期減益予想据え置き

 26年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比3.4%増の188億67百万円、営業利益が99.5%減の14百万円、経常利益が86.1%減の4億17百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が84.5%減の2億71百万円だった。カルビスタ社とのライセンス契約締結に伴う契約一時金支払を含む研究開発費の増加(79.5%増の53億82百万円)で減益だった。

 セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が3.3%増の182億29百万円で営業利益が3億24百万円の損失(前年同期は24億10百万円)だった。海外売上高(医薬品、農業薬品)は79.3%増の17億79百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連賃貸料など)は売上高が4.4%増の6億38百万円で営業利益が0.6%減の3億38百万円だった。

 国内主要医薬品・医療機器の売上高(単体ベース)は、クレナフィン群が2.6%減の43億77百万円、アルツが6.0%減の46億14百万円、セプラフィルムが0.3%増の17億29百万円、フィブラストが9.7%減の5億65百万円、エクロックが17.9%増の8億03百万円、リグロスが5.2%減の2億20百万円、ヘルニコアが24.8%減の78百万円、ジェネリック医薬品が11.5%減の18億24百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いて、売上高が前期比6.4%減の880億円、営業利益が75.3%減の52億円、経常利益が71.8%減の60億円、親会社株主帰属当期純利益が75.6%減の34億円としている。配当予想は前期と同額の190円(第2四半期末95円、期末95円)としている。予想配当性向は214.6%となる。

 26年3月期は減収・減益予想としている。前期の一時的収益(ライセンス契約に基づく契約一時金収入など)が剥落することに加え、主力のクレナフィン群やアルツの減収、研究開発費の増加(11.6%増の209億円)等を見込んでいる。

 国内主要医薬品・医療機器売上高計画(単体ベース)はクレナフィン群が21.7%減の132億円、アルツが2.8%減の185億円、セプラフィルムが0.7%増の70億円、フィブラストが5.4%減の23億円、エクロックが17.8%増の24億円、リグロスが8.4%増の10億円、ヘルニコアが1.2%減の4億円、ジェネリック医薬品が4.7%増の89億円としている。

■長期経営計画2031

 2023年3月期から10か年の長期経営計画2031については、経営環境の変化や計画の進捗を踏まえ、25年4月に一部見直しを公表した。見直しの考え方として、企業価値向上には画期的・革新的新薬の継続的な上市が不可欠のため戦略投資を増額するほか、業績やキャッシュ・フローの不確実性およびボラティリティの高まりを見据えつつ財務規律を維持する。また重要なステークホルダーである株主・投資家への株主還元を強化する。

 業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では、10年間で8品目上市(P1以降PJ常時6品目以上をP1以降PJ常時8品目以上に変更)するためのパイプラインを確保する。戦略投資計画については、10年間で2000億円以上を2600億円以上に変更した。株主還元方針では、従来の配当性向30%以上・総還元性向50%以上を維持するとともに、25年3月期の配当190円を下限とし、株主還元については今後7年間で総額500億円以上を見込んでいる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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