
■GDP成長率を0.4ポイント下押し、輸出1.3ポイント減
帝国データバンクは8月20日、米国の「トランプ関税」が日本経済に与える影響について試算結果を発表した。同社のマクロ経済予測モデルによると、関税が継続した場合、2025年度の日本の実質GDP成長率は関税がなかった場合に比べ0.4ポイント下押しされると予測された。さらに、企業の経常利益は1.7ポイント低下し、倒産件数は約260件増加する可能性があると試算された。
背景には、米国が4月に公表した「相互関税」がある。日本やEU、中国など57カ国・地域に対し関税が大幅に引き上げられ、日本にはベースライン10%に加えて上乗せ15%が課された。7月23日には日米交渉で自動車・部品の関税を15%に設定する合意が成立したが、大統領令には合意内容が反映されず、一律25%の課税が続いている。自動車や鉄鋼、アルミニウムなどに対する高率関税は輸出全体を強く押し下げる要因となっている。
試算によれば、輸出は1.3ポイントの下押し効果が見込まれ、特に対米輸出の3割超を占める自動車関連が大きな打撃を受ける。これにより企業の設備投資も0.2ポイント減少し、経常利益は5年ぶりに減少に転じる可能性がある。また、労働者所得や個人消費にも波及し、消費支出の伸び率は0.2ポイント低下する見通しだ。こうした複合的な影響により、2024年度に続き2025年度の倒産件数は増加に転じるとされる。
同レポートは、関税交渉の合意によって一定の不透明感は和らいだものの、実施時期や対象分野が未確定であり、日本経済にとって不安定要因が残ると指摘している。特に半導体や医薬品など今後対象となる分野の決定次第で、影響はさらに拡大する可能性がある。中小企業にとっては海外取引がなくても間接的に影響を受けるため、政府には有効な支援策が求められ、企業側も柔軟な対応力を備えることが重要であると結論づけた。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)