ゼリア新薬工業、主力製品好調と海外事業拡大で業績向上を目指す

 ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。第11次中期経営計画では、好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進する方針としている。26年3月期は研究開発投資やシステム投資などを考慮して小幅減益予想としている。第1四半期は前期の反動などで減収・大幅減益だったが、第2四半期以降は反動影響が緩和される見込みとしている。積極的な事業展開で第2四半期以降の挽回を期待したい。株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費、為替などの影響を受けやすい。

 25年3月期のセグメント別売上高は医療用医薬品事業が589億70百万円、コンシューマーヘルスケア事業が281億79百万円、その他(保険代理業・不動産賃貸収入等)が1億60百万円、地域別売上高は日本が376億04百万円、イギリスが113億49百万円、フランスが90億46百万円、その他の欧州が233億50百万円、その他地域が59億60百万円だった。

■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤(FD)アコファイドなども拡大している。25年3月期の主要製品の売上高はアサコールが235億65百万円、ディフィクリアが207億64百万円、エントコートが53億72百万円、アコファイドが30億40百万円、その他が62億28百万円だった。

 鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト(20年9月に国内で販売開始)については消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。23年4月には、アステラス製薬が日本において製造販売しているクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎治療剤「ダフクリア錠200mg」(一般名:フィダキソマイシン、以下:ダフクリア)について製造販売承認を継承した。

 なお25年3月には、高カリウム血症を適応症として「ビルタサ懸濁用散分包(以下ビルタサ)(開発コードZG-801、導入品)」の販売を開始した。ビルタサはCSL Vifor(本社:スイス)によって開発された非吸収性の陽イオン吸着ポリマーで、高カリウム血症患者の血清カリウム値を低下させる薬剤である。25年2月時点で日本を含む世界42カ国で承認されている。

 海外展開は、アサコールについては欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。また24年6月にはベルギーのAgastra社と、欧州・米国・カナダ地域における機能性ディスペプシア治療剤としての独占的開発および販売に関する契約を締結した。

 子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社からクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)の欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継し、販売を拡大している。

 24年11月には子会社のティロッツ社がShanghai Pioneer Holdihg Ltd傘下の香港Pioneerと、潰瘍性大腸炎治療剤ASACOL錠800mgの中国におけるマーケティングに関する契約を締結した。

■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力

 コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、グループ会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。25年3月期の主要製品の売上高はヘパリーゼ群が125億52百万円、コンドロイチン群が55億72百万円、ウィズワン群が15億30百万円、その他が85億23百万円だった。

 事業拡大に向けて西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成などを推進している。なおヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として20年4月に日水製薬医薬品販売を子会社化(健創製薬に商号変更)し、さらに生産拠点の集約や最適化を目的として25年4月に健創製薬を吸収合併した。

 24年3月にはデンマークの子会社ZPD A/Sが、デンマークの栄養補助食品の原料メーカーであるEHP ApSと共同で、栄養補助食品の企画・販売会社JoinHealth ApSを設立し、デンマークにおいてコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品「Movagain Pro」を発売した。デンマークにおいて唯一のコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品である。

 25年8月には、イオナ インターナショナルが独自の方法で抽出している聖徳石浸出液の肌機能に対する効果を発表した。徳留嘉寛先生(現 国立大学法人佐賀大学 海洋エネルギー研究所化粧品科学講座 教授)と共同研究を進めており、これまでの研究で聖徳石浸出液が表皮角化細胞の分化を促進するほか、三次元培養表皮内の天然保湿因子を増加させることがわかった。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(25年8月5日現在)は以下の通りである。

 国内ではZ-338(自社品、一般名アコチアミド)が小児機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階、ZG-802(自社品、一般名アコチアミド)が低活動膀胱を適応症として第2相段階である。

 Z-338の海外導出では、Faes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてグアテマラおよびペルーで24年9月~11月に販売開始、ニカラグアで承認取得、コロンビア、コスタリカ、パナマで承認申請中、Pharmaceutical Joint Stock Company of February 3rdが機能性ディスペプシアを適応症としてベトナムで承認申請中、United Italian Trading Borporationが機能性ディスペプシアを適応症としてシンガポールで承認申請中、Agastra―Labが機能性ディスペプシアを適応症として欧州・米国・カナダで第3相段階、Meiji Seikaファルマが機能性ディスペプシアを適応症としてタイで販売開始(24年9月)した。

 なお23年7月には、子会社のTillotts Pharmaが世界的ベンチャーキャピタル大手TVMと共同で、潰瘍性大腸炎に対する経口抗体療法開発を目的として、米国のバイオベンチャーMage Bioに対して最大28百万USドル出資した。

■好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進

 第11次中期経営計画(24年3月期~26年3月期)では経営目標値に、最終年度26年3月期連結売上高900億円、海外売上比率50%以上を掲げている。

 重点戦略としては、欧州地域における継続的な市場形成(アサコール、ディフィクリア)に加えて、アジア地域への展開(ゼリア新薬工業の製品輸出拡大、ベトナムFTファーマの新工場建設や東南アジア近隣諸国への製品輸出拡大)を推進する。また国内の医療用医薬品事業では、自社創薬品であるアコファイドをはじめ、フェインジェクト、ダフクリアの拡販に加えて、第11次中期経営計画中に上市が見込まれる高カリウム血症治療剤ZG-801の投入などにより、国内医療用医薬品市場におけるプレゼンスを確保する。コンシューマーヘルスケア事業では、コンドロイチン群やヘパリーゼ群などの主力製品群に加えて、ローヤルゼリー群、西洋ハーブ群、化粧品群など多くの製品群において市場拡大を図る。

■26年3月期1Q減益だが2Q以降の挽回期待

 26年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.1%増の900億円、営業利益が1.6%減の120億円、経常利益が6.5%減の120億円、親会社株主帰属当期純利益が4.4%減の95億円としている。配当予想については前期比1円増配の48円(第2四半期末24円、期末24円)としている。連続増配で予想配当性向は22.3%となる。

 第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%減の194億89百万円、営業利益が61.4%減の15億20百万円、経常利益が69.6%減の16億62百万円、親会社株主帰属四半期純利益が74.1%減の10億90百万円だった。

 減収・大幅減益だった。医療用医薬品事業が前期の反動で減収となり、海外子会社における基幹システム投資などで経費が増加したほか、営業外で前期計上した為替差益(12億96百万円)が剥落したことも影響した。

 医療用医薬品事業は売上高(外部顧客への売上高)が13.5%減の126億66百万円、営業利益(全社費用等調整前)が54.1%減の17億16百万円だった。主要製商品の売上高は、アサコールが11.7%減の48億52百万円、ディフィクリアが11.4%減の45億69百万円、エントコートが37.8%減の9億77百万円、アコファイドが5.6%増の8億08百万円、その他が12.2%減の14億59百万円だった。国内市場は薬価改定や長期収載品の選定療養制度、競合品の影響などで厳しい状況が続いた。海外は主要市場であるイギリスやフランスが堅調だったが、一部地域において前期第4四半期の出荷が大幅に増加した反動で減少した。

 コンシューマーヘルスケア事業は、売上高が0.2%増の67億84百万円、営業利益が9.3%減の13億36百万円だった。主要製商品の売上高は、ヘパリーゼ群が9.5%増の30億65百万円、コンドロイチン群が4.7%減の13億80百万円、ウィズワン群が11.0%増の3億70百万円、その他が10.0%減の19億67百万円だった。ヘパリーゼ群や植物性便秘薬ウィズワン群は堅調だったが、コンドロイチン群などの一部製品が競合品の影響を受けた。

 その他(保険代理業・不動産賃貸収入等)は売上高が4.3%増の38百万円、営業利益が13.8%減の54百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。売上面は医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも順調に推移して増収だが、利益面はエネルギー・原材料価格高騰の影響、研究開発投資や海外子会社における基幹システム投資などを考慮し、さらに営業外での為替差益を見込まず小幅減益予想としている。第1四半期は減収・大幅減益だったが、第2四半期以降は反動影響が緩和される見込みとしている。積極的な事業展開で第2四半期以降の挽回を期待したい。

■株主優待は年2回(3月末と9月末)実施

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末および9月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈している。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。8月22日の終値は2072円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS215円52銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の48円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2031円33銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約1101億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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