【どう見るこの相場】金融政策転換で主力株売られ、スタンダード・グロース市場に資金流入

どう見るこの相場

■プライム市場の需給悪化を警戒し、個人投資家は新興市場へ資金を逃避

 「桐一葉 落ちて天下の秋を知る」と慨嘆した戦国武将か、それとも「水鳥の羽音」を敵の夜襲と勘違いして慌てて逃げ出した都の公達か、いずれとみるか悩ましい。前週末19日の日経平均株価の乱高下である。この日発表の日銀金融政策決定会合で決定された日銀の保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の売却がカタリスト(株価材料)となった。日銀が保有しているETFは、簿価で37兆円、時価総額では70兆円と推定されているのである。これが市場売却されれば、株式需給を急悪化させるとして市場心理を暗転させた。

 19日の日経平均株価は、前場に549円高して上場来高値を更新したが、日銀のETF・J-REIT売却決定発表とともに急落し一時、807円安と4万4000円台を割った。と同時に日経平均株価にツレ安した東証スタンダード市場株価指数や東証グロース市場株価指数は、プライム市場の需給悪化の圏外にあるとして逆行高し、引けてみればスタンダード市場指数は続伸し、グロース市場指数は3営業日ぶりに反発した。日経平均株価の先行きが不透明化するとみて直ちにスタンダード市場株、グロース市場株に乗り換えた反射神経、変わり身の早さには恐れ入るばかりである。

■日銀、ETF・J-REIT売却決定で日経平均乱高下

 ただ日経平均株価も、大引けに掛けてリバウンドし4万5000円台をキープした。日銀のETF売りは、年間の簿価ベースで3300億円程度、時価ベースで6200億円程度と100年計画で推進され、十分に市場で吸収可能と冷静に判断されたようである。すなわち取引時間中の807円安は、「水鳥の羽音」ということになる。都の公達と同じでこわがり過ぎである。そのあとオープンした前週末の米国市場でも、主要3株価指標が揃って上場来高値を更新したことも、サポート材料になりそうだ。

 その一方で、「桐一葉」の懸念も残る。というのも日銀の金融政策決定会合では、政策金利据え置きの現状維持が決定されたが、9人の政策委員のうち2人が、政策金利引き上げを求めて反対票を投じたことが伝えられ、次回の10月29日、30日開催予定の会合では政策金利引き上げの再開の可能性が高まったとも観測されたからだ。「アベノミクス」、「クロダノミクス」以来、連綿と続いた金融緩和相場が大詰めを迎え、いよいよ金融引き締めへパラダイムシフト(規範変遷)するかもしれないのである。

■主力株の逆張りと中小型株の押し上げ効果に注目

 「桐一葉」派と「水鳥の羽音」派のいずれが当たり屋でいずれが曲がり屋であるかは、それこそ金融当局者の口癖ではないが、今後のデータ次第だろう。ただデータが出揃う前に買いか売りか判断しなくてはならないのが、市場参加者のつらいところでもある。このいずれにも対応可能な硬軟両様の投資スタンスが求められることになる。「水鳥の羽音」に過ぎないのなら、前週末19日に急落し日経平均株価のマイナス寄与率の大きかったランキング上位のファーストリテイリング<9983>(東証プライム)、TDK<6762>(東証プライム)、リクルートホールディングス<6098>(東証プライム)などの逆張りが、当たり屋投資家の投資スタンスとなる。

 一方、「桐一葉」なら前週末19日の東証スタンダード株、東証グロース株の逆行高は、一過性の株高ではないといういことになる。しかもこの逆行高銘柄は、「水鳥の羽音」ケースでも、主力株の牽引により相場全般のベースがかさ上げされるなかで、一段と出遅れ感が目立つと押し上げ効果を発揮してレベルアップが期待できる可能性を秘めていることになる。そこで今週の当コラムでは、レベルアップの可能性のある東証スタンダード市場銘柄・東証グロース市場銘柄にアプローチすることとした。この関連銘柄を精査すれば、低PER銘柄、高配当銘柄などの有望銘柄が目白押しで、時間は掛かっても十分に期待に応えてくれそうである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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