【編集長の視点】「速度と勢い」に欠けたら相続税増税の節税ビジネス関連株もサブ・テーマ株に浮上=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

黒田東彦日銀総裁は、かなり気合十分、今風でいえば「ハンパない」とお見受けする。追加金融緩和策を日銀委員の賛成5人、反対4人の僅差で決めたあとの11月5日開催の講演会で、昨年4月の異次元緩和策決定後の記者会見と同様の「バズーカ砲発言」がテレビに大写しされたからだ。「中途半端な治療は病状を拗らせるだけ」、「デフレ期待を払しょくするためには速度と勢いが必要」と続き、「できることは何でもやる」と締めくくってカリスマぶりを大いに発揮した。

これを受けて株式市場も大幅上昇、為替市場も急速な円安が続いたが、これが果たして気合十分な黒田総裁の「おメガネ」に叶っているかどうかといえば保証の限りではない。日経平均株価は、追加金融緩和策決定後に3営業日で1300円して年初来高値を更新し、為替相場も、1ドル=115円台と7年ぶりの円安となったが、こと株価に関しては、1万7000円台を前に上値が重くなった。頼みの日本一の稼ぎ頭のトヨタ自動車<7203>(東1)も、今3月期業績を上方修正し過去最高純益を更新したが、反応は限定的で7000円台を上抜くまでに至っていない。これでは黒田総裁は、「速さと勢い」にはやや不満を抱いているのではないかと慮ってしまうのである。

黒田総裁が、抱えるだろうご不満はもっともなことだろうが、マーケットの方にも、ガンガン買い物を入れる外国人投資家の真似はできず、どちらかといえば、ついつい売り向かってしまうようなそれなりの事情があるのである。個人投資家にとっては、12月入りとともに安倍晋三首相が、来年10月に消費税を再増税するかどうか政治決断する時期が迫り、再増税に備えて生活防衛の投資家心理が働き、とても黒田総裁の督励通りには「デフレ期待を払しょく」とはならないのである。

株価・不動産の資産効果でたった2%の再増税など痛くも痒くもない富裕層の投資家にとっては、来年1月からの相続税再増税の難関が待ち構えている。相続税の基礎控除の非課税枠が、4割も増える再増税であり、折角築いた財産が、3代相続すればゼロとなるといわれているから、これは資産防衛を最優先したくてはならない切実な問題になる。しかも、黒田総裁の追加緩和策で地価がさらに上昇するとすれば、都心の資産家だけの問題だったものが、千葉、埼玉、神奈川の近郊各県の富裕層にまで及ぶ皮肉な結果も予想されることになる。

株式相場は、「クロダノミクス」を歓迎した外国人投資家の尻馬に乗って輸出主力株中心に強気投資をするのが本筋、メーン・テーマだろうが、もし、この主力株が、こと黒田シナリオと異なって高値で「拗れる」ようなら、「サブ・テーマ」としてこの相続税再増税に関わる節税ビジネス関連株にも目配りするのも一法となるはずである。「速さと勢い」には欠けるかもしれないが、ソコソコのリターンは期待できるとみたい。

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