【小倉正男の経済羅針盤】世界経済を救えるのはアメリカのみ

■注視しなければならないのはアメリカ経済

小倉正男の経済羅針盤 日銀の追加緩和措置がなかったことが騒がれている。しかし、金融政策の有効性からみて、追加措置がなかったのもうなずけるものである。これは期待するほうが過大というか、性急すぎるというべきである。

 いまいちばんに懸念しなければならないのはアメリカの景気が不透明になっていることだ。注視すべきは、アメリカ経済の先行きにほかならない。

 本末でいえば、本はアメリカであり、末は日本である。日本が追加措置を見送ったことなど、語弊はあるがキャラメルのおまけみたいなことでしかない。

 世界全体の経済に不透明のシグナルが出ている。どこが世界経済を引っ張る力を持っているか――。
 となれば見渡して、結局はアメリカが世界経済をけん引するのがほぼワン&オンリーのシナリオということになる。世界経済の先行きを考えれば、アメリカ経済が順調な回復をみせることしかほかに手はないのではないか。

 為替でいえば、ドル高トレンドになることが望まれる。ただ、これは「円安ドル高」など日本経済に焦点を当てて考える、といった狭小な話ではない。

■ドイツにアウトバーンをもう一本つくれといっても無理

 ドイツに世界経済を引っ張る力はあるだろうか。「財政均衡」にこだわっているのに公共土木投資をやれといっても、それはやるわけもない。

 「ギリシャに財政均衡を求めているのに、アウトバーン(高速弾丸道路)をもう一本つくる気なんてはないわ」「それに私はヒトラーじゃないわよ」――。メルケル首相にそう言われるのが落ちである。

 日本にそれを求めても、求める先からどだい無理だ。
 では、中国は・・・、これもはてな?である。リーマンショック時に世界経済の「白馬の騎士」となった中国もいまはバブル崩壊を抱えている。二度目の主役は張りたくても張れない。ゾンビ企業退治といったバブル処理が精一杯といったところである。

■世界経済の窮状を救えるのはアメリカのみ

 となれば、アメリカ経済の底力というか、回復を待つしかない。
 アメリカの雇用や消費、それに住宅投資、設備投資動向といった経済指数が好転し、ドルが評価されるような展開が世界経済にとって望ましいということになる。ここはたとえ針の孔でも通すしかない。

 「中国・原油・アメリカ」――、極論すれば、この3つの要因が世界経済の行方を決定する。日本経済にとってもまさに生死・浮沈を左右する3要因にほかならない。

 前回コラムで、アメリカの利上げの動きを「空騒ぎ」と評したのは、アメリカの目線があまりにも狭小にアメリカ一国の経済に向けられているからにほかならない。世界全体の経済をみれば、そう甘い状況ではない。

 世界経済が全体に傾いているのにアメリカ一国が繁栄すればよいというのは少し虫のよい話ではないか。
 世界経済の全体を持ち上げるには、アメリカ経済の繁栄・回復が不可欠という目線が求められる。原油も重要で、価格が回復すれば、アメリカ経済の回復を促進することになる。

 アメリカが順調に利上げに進めるような状況が、世界にとっても、もちろん日本にとっても望ましいことであるのは間違いない。

(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る