【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の手口とは?脅かすよりも落しどころが重要

どこかの地回りの手口?

 ドナルド・トランプ大統領には、メディアを含めて振り回され過ぎではないか。

 ただ、ドル円の為替相場などもトランプ大統領の思惑通りにドル安円高に推移している。
 ドル安がはたしてアメリカの国益かどうかわからないが、まずはトランプ流のペースで進行しているというところだ。

 トランプ大統領は、ネゴシエートル(商人)感覚で、ハッタリをかましてくる。ディールなのだから、相手を驚かせて威圧して、着地=落しどころは違ってもそれでよいということなのだろう。
 ネゴシエートル(商人)は、交渉しないと商売(ネゴシオ)したという気持ちにならないという存在である。

 マティス国防長官が来日して、「日本の駐留費負担は他国のお手本」などの発言に終始した。
 「カネ(駐留費)を全額払わないのなら、アメリカ軍は撤収する――」。そんなトランプ大統領の発言からすると、マティス国防長官が大変にまっとうにみえる。
 どこかの地回りの手口だが、それをアメリカの大統領にやられたら、たまったものではない。

合理性がなければ、政策は成功しない

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、それはそれでよいのだが、保護主義というか、重商主義めいたものは合理性があるのか。

 ドル安にしたら、日本でアメ車が売れるとは思えない。「被害者意識」だけで、マーケットを否定しても、合理性がなければ経済政策としては成功しない。

 私の住んでいる地域でも、クルマに興味があるほうではないが、ドイツ車はよくみかける。しかし、アメ車はみかけない。まずは何故売れないかを考えるべきだ。

 おそらく、トランプ大統領はネゴシエートル(商人)であり、わかっているのではないかと思われる。アメ車であれ、イヴァンカ・ブランドのファッション衣料であれ、ともあれ声高に言ってみる。
 地回りの手口と思えば、是非はともかく、いちいち驚くことはない。

片一方だけよいでは、ネゴシオ(商売)は成立しない

 日本の不動産バブル時、三菱地所がNYのロックフェラーセンタービルを買収した。アメリカのほうは、「不動産・ビルは持って帰れない。巨額のジャパンマネーがアメリカに入ってくるのだから歓迎」という雰囲気だった。

 当時、ドナルド・トランプ氏は、「我々は不動産ビジネスでは、利回りしか基準を知らない。日本は含みという基準でビルを買っている」と――。日本はべらぼうに高く買っている。それはそれでよいという立場だった。

 少し甘いかもしれないが、案外、ネゴシエートル(商人)らしいプラグマティズムも持っているのではないか、と推察したいものだ・・・。

 週末の日米首脳会談、フロリダでゴルフも行うというのだが、ネゴシオ(商売)ということでよい交渉をしてほしい。安倍晋三首相から何らかの手土産が出るかもしれない。

 脅かすだけで落しどころを知らないではネゴシエートル(商人)とはいえない。片一方だけよいでは、ネゴシオ(商売)は成立しないものである。そのあたりのことは双方ともわかっているのではないか。

(小倉正男:『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)

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