まだカヤの外・資源関連の商社株に「日はまた昇る」か?高配当取りからトライアルして金融株への追随高を期待=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

ファナック<6954>(東1)が上場来高値を追い、トヨタ自動車<7203>(東1)が2007年の上場来高値目前に迫っている。当然、日経平均株価は、1万8300円台を回復して15年ぶりの高値水準に躍り出た。その日経平均株価にキャッチアップして、7年2カ月ぶりの高値となり一時は日経平均株価をアウトパフォームしたのが、東証株価指数(TOPIX)である。これは万年割り負け株に甘んじていた三大メガバンクが今年2月入りとともに2割強も上昇し、それに前後して地銀株に昨年来高値更新銘柄が続出し、さらに生・損保株まで出直ってきたことなどが要因となっている。

この金融セクター株の出直りは、金利上昇が継続するとして利ザヤ拡大期待を高め、株式需給的にも外国人投資家が買い再参戦し、さらに高配当利回りを評価した年金基金などの「クジラ」投資家の買いが続いているためとマーケットコメントされている。この金融セクター株に出遅れ、いやむしろ相場の全面高に水を差しマーケットの足を引っ張るかのようにカヤの外に放置される懸念があるのが資源関連株である。原油先物(WTI)価格が、今年1月末に5年10カ月ぶりの安値となる1バーレル=43ドル台まで急落し、商社株を筆頭に石油株、鉱業株に業績の下方修正が相次ぎ、赤字転落する銘柄まで出てきたとなれば、マーケットから置いてきぼりにされるのは致し方のないことである。WTI価格はその後、1バーレル=53ドル台まで戻したものの、足元は、フシ目の50ドル台での攻防を続け、かの米国のカリスマ投資家のウオーレン・バフェット氏が、米石油大手のエクソンモービル株を全株売却したとも伝わっており、先行きのWTI価格の動向次第では業績的にも株価的にもさらに二荒れ、三荒れも懸念されることになる。

しかしである。こと配当利回りでは、商社株は金融セクター株に負けてはいないのである。負けていないどころか、東証第1部利回りランキングでは、トップ10にランクインする銘柄さえ複数あるのである。今3月期業績を下方修正しても前期比では増配をキープする銘柄がほとんどだからである。この代表は、大手商社株で最も早く昨年9月に今3月期業績を下方修正し、資源関連株にショック安を波及させた住友商事<8053>(東1)で、業績修正とともに期初予想の今期配当を未定としたが、同10月にはこの未定予想を再変更、期初予想通りに中間配当、期末配当をともに25円とする年間配当を50円(前期実績47円)への増配を発表した。これは、業績下方修正が、米国で進めてきたシェールオイルガス開発プロジェクトで約1700億円のほか、豪州石炭事業などの資源開発で合計2400億円の減損損失を計上したことが要因となっており、これを除いた足元の業績は堅調に推移していることを理由とした。

要するに大手商社は、巨額損失を即処理できるほど稼ぐ力を強めていることを逆に証明したわけで、かつての大手商社とは様変わりとなっているといえそうだ。筆者は、昔も昔、もう30年以上も前に証券専門紙の記者として大手商社を担当したことがあるが、そのときまだ年2回だった決算発表での最大の取材眼目は、その決算期末の各社の保有株式の含み益がどれほど増加したかにあった。経営は、いわゆる「含み益経営」であり、株式投資も、表面の業績評価からではとても買い上がるわけにはいかず、「含み益評価」が市場コンセンサスであった。それがいまや、大幅な業績下方修正をした住友商事を除いてPER評価では軒並み割安であるばかりか、PBR評価でも1倍を割る銘柄が多数派で、配当利回りに至っては、市場のランキング上位に顔を並べているのである。まさに隔世の感が強い。

ということで、まだ3月期末の配当権利付き最終日までは1カ月強を残しているが、大手商社株の株価に「日はまた昇る」を期待してみたいのである。もちろんこの前提は、出遅れ訂正で先行した金融セクター株、なかでも3メガバンク株に年金基金などの「クジラ投資家」や外国人投資家の買いが続くことや、WTI価格が、今年1月の安値を下回らないことなど数多い。しかし、仮にこの前提が崩れて株価面へ下押し圧力になっても、大手商社株は、「キャピタルゲイン」、「インカムゲイン」の両建て狙いから、かえって配当利回りが逆に高まるとする「インカムゲイン」オンリーに機敏に切り替えて妙味は減損しないはずだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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