材料株ファンは消去法でインバウンド関連株に毎月一度の定期好循環相場を期待=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

安倍晋三首相の経済政策の眼目は、自ら再三にわたり言及しているように「経済の好循環」である。同様に兜町の投資家なかでも、少なくない材料株ファンが願っているのは、「材料株の好循環」である。材料株は、「官製相場」を牛耳るいわよる「クジラ」投資家とは別次元・別行動で、少々無理筋でも自らの才覚で意表をつくテーマ性を発掘して、類と友を呼び集める駆け引きをし、神出鬼没な値動きや勝負の速い速決即決性など株式投資が本来もつ至極メリハリの効いた面白さ、醍醐味を味あわせくれるからだ。この目論見が的中すれば、「アベノミクス」が政策目標としている「デフレマインド脱却」は、間違いなく個人レベルで実現すること請け合いである。

2012年11月からスタートした「アベノミクス相場」の2年4カ月で、日経平均株価は、2倍超の値上がりとなったが、この間も「材料株の好循環」が投資家を楽しませてくれた。ランダムに数え上げてもiPO関連株、カジノ関連株、東京オリンピック関連株、ロボット関連株、燃料電池車関連株、3Dプリンター関連株、LINE関連株、格安スマホ関連株、インバウンド(外国人観光客)関連株、マイナンバー制度関連株、IPO(新規株式公開)株、再生エネルギー関連株、TPP(環太平洋経済連携協定)関連株など多種多彩、多士済々の材料株が主役、脇役として登場し大車輪の活躍をしてくれた。

ところが、「アベノミクス相場」も、3年目に入った今年は、この材料株の登場回数が、めっきり減って、賞味期間も短期化している印象が否めない。それはそうだろう。年初来、「官製相場」の色合いが強まり、「クジラ」投資家が買い支え、外国人投資家が先物主導で仕掛ける主力株の方が、材料株よりよっぽど値動きが大きいからだ。たまに材料株が動意付いても線香花火的に短命に終わり、かつてのように、イナゴ投資家が離合集散したあとでも2回転も3回転もしてくれたような値保ちの良さは影を潜めている。昨今、株価指数ばかり上がって、乗り遅れ、取り残されている投資家が多いと指摘されているのも、どうやらこれら材料株ファンが不遇をかこっているのが一因となっているようだ。

ただ材料株は、兜町の絶滅危惧種になったわけではない。個人投資家が捲土重来を期す限り必ず息を吹き返すはずであり、その準備行動、予測スクリーニングだけは怠れない。そのためにもこれまで数々、登場した材料株の取捨選択が不可欠なわけで、そこで消去法的に息が長く関連株の裾野も広い材料株として浮上するのがインバウンド関連株である。

インバウンド関連株は、昨年2014年に外国人観光客が、前年比29.4%増の1341万人と過去最高に達し、そこ国内での消費金額も同43.3%増の2兆305億円と過去最高となったことで、国内小売り各社への恵みの雨となって、この特需を取り込むか取り込めないかの違いが業績や株価の格差につながってきた。

例えば足元でサブライズとなったのが、象印マホービン<7965>(東2)の今11月期業績の上方修正である。これまでテレビ各社の報道番組で、外国人観光客の小売り店頭での「爆買い」光景が再三、流され、象印の「マグカップ」や江崎グリコ<2206>(東1)の抹茶味の「ポッキー」が人気商品になっているなどと伝えられていたのである。その「爆買い」が実際に、象印の早期上方修正につながり、株価も、発表からわずか4日間でストップ高を交えて45%高したのだから、まだまだインバウンド関連株には上昇エネルギーは溢れ返っていると推察される。

もちろん、インバウンド関連株人気は、2月の中国などアジア圏での春節(旧正月休暇)でピークを過ぎたとの見方があることも否定できない。しかし、外国人観光客の動向は毎月、日本政府観光局が、訪日外客数(推計値)として発表して明らかになり、今月も4月22日に発表を予定している。この推計値に一喜一憂するのは間違いなく、手掛かりとして息の長い材料株人気が続くことも否定できないのである。(本紙編集長・浅妻昭治)

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