【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パシフィックネットは16年5月期の収益拡大期待、マイナンバー制度関連やセキュリティ関連としても注目

銘柄分析

 パシフィックネット<3021>(東マ)は中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去事業を展開するセキュリティサービス提供企業である。株価は年初来高値圏550円~600円近辺でモミ合う展開だ。16年5月期の収益拡大期待でモミ合い上放れて4月高値620円を目指す展開だろう。マイナンバー制度関連やセキュリティ関連としても注目したい。

 パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、レンタル事業も展開している。13年10月に旗艦店としてオープンした「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に9店舗を展開し、主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上や業務プロセス効率化などで収益力を高めている。

 全国主要都市8箇所の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のためのセキュリティ体制に強みを持っている。IT機器のデータ消去・処分サービスはマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。

 6月10日には、電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から15年5月に、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定されたと発表した。

 企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上に伴って中古情報機器の入荷台数が大幅に増加している。データ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がり、大手金融機関からの中古情報機器引取回収も本格化している。

 新サービスとして14年8月、レカム<3323>およびリステック(東京都)との3社協業で中小企業向けサーバー機器レンタルサービスを開始し、法人向け格安スマートフォンのサービスも開始した。

 14年10月には企業・官公庁・自治体での使用済みIT機器の回収からデータ消去までの一連の作業を大幅に効率化する日本初のWebサービス「P-Bridge」の無償提供を開始した。IT資産管理ソフト大手エムオーテックス社とデータ連携し、当社の引取回収サービスの提供価値を高める戦略だ。15年2月には「P-Bridge」に関して特許出願した。今後は「P-Bridge」をソリューション・プラットフォームと位置付けて新たなサービスも投入する方針だ。

 14年11月には、Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を展開すると発表した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。

 15年4月にはイオンリテールとApple製品等の下取りサービスにおいて協業した。イオンリテールが運営するApple製品専門店「NEWCOM(ニューコム)イオンレイクタウン店」(埼玉県越谷市)における下取りサービスを協業で展開して仕入強化に繋げる。

 15年5月に開催された「第6回教育ITソリューションEXPO」では、サービス面で補完関係にある指紋認証ソリューションのディー・ディー・エス<3782>と、マイナンバー制度に対応した情報漏洩対策を共同で特別展示する新たな取り組みも行った。

 前期(15年5月期)の連結業績予想(7月15日公表)は売上高が前々期比4.8%増の42億53百万円、営業利益が同5.4%増の3億円、経常利益が同1.2%増の3億11百万円、そして純利益が同6.3%減の1億71百万円としている。配当予想は前期と同額の年間16円(期末一括)で、予想配当性向は48.2%となる。

 第3四半期累計(6月~2月)は前年同期比17.2%増収、同12.6%営業減益、同11.4%経常減益、同14.8%最終増益だった。引取回収・販売事業における中古スマートフォン・タブレットなど中古モバイル機器の入荷台数増加と業者向け卸販売の好調、レンタル事業における大手企業向けノートPC4000台超の大型案件などで大幅増収だった。営業利益と経常利益はレンタル資産償却および一時経費の先行で減益、純利益は投資有価証券売却益の計上および法人税等の減少で増益だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)11億50百万円、第2四半期(9月~11月)10億86百万円、第3四半期(12月~2月)10億52百万円、営業利益は第1四半期1億19百万円、第2四半期32百万円、第3四半期36百万円だった。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高77.3%、営業利益62.3%、経常利益65.0%、純利益91.8%だった。営業利益と経常利益の進捗率がやや低水準だが、増収基調であり、生産性向上や業務プロセス効率化も寄与して第4四半期(3月~5月)の挽回が期待される。

 また今期(16年5月期)は、官公庁・企業におけるセキュリティ意識の高まりに、顧客対応強化策も奏功して中古情報機器の引取回収・販売、さらにデータ消去サービスが順調に増加して収益拡大基調だろう。マイナンバー制度関連の需要も期待される。

 株価の動きを見ると、第3四半期累計の営業減益を嫌気する形で4月の年初来高値620円から反落したが、下押す動きは見られず年初来高値圏550円~600円近辺でモミ合う展開だ。

 6月11日の終値575円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS33円23銭で算出)は17~18倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間16円で算出)は2.8%近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS352円83銭で算出)は1.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が下値を支えてモミ合い煮詰まり感を強めている。サポートラインを確認した形であり、16年5月期の収益拡大期待でモミ合い上放れて4月高値620円を目指す展開だろう。マイナンバー制度関連やセキュリティ関連としても注目したい。

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