【どう見るこの相場】文化財的な相場アノマリーを試してインフレヘッジ株と売られ過ぎハイテク株の二本建てに活路

 およそ半世紀は経とうというかつての兜町の相場アノマリーが、只今現在の世界のマーケットで通用するわけはない。「公定歩合」アノマリーである。日本銀行の金融政策が、公定歩合の一本足打法だった時代のアノマリーで、景気が過熱し貿易収支も赤字化すると日銀は、何度か公定歩合を引き上げ物価上昇を抑え込み景気の沈静化を図った。好況下では当然、株価も高騰していたが、普通は政策発動には敬意を表する証券マンたちは、「引き上げは2回目までは大丈夫」、「肉は腐る前が一番おいしい」と頷き合って、「みんなで買えば怖くない」とばかり上値買い乗せを敢行したものである。

 そんな古色蒼然とした文化財的なアノマリーが通用しないのは当然で、敢えて持ち出すのさえためらわれる。しかしである。前週末4日の米国市場を遥か太平洋のこちらからみていると、その通用しないはずの兜町のアノマリーを試しているようでタイムススリップされたような既視感を覚える。4日朝方に発表された今年1月の米国の雇用統計で、非農業部門の雇用者数が46万7000人増となり、平均時給の上昇も市場予想を上回り、FRB(米連邦準備制度理事会)の早期金融引き締め策を警戒し、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は一時300ドル超も続落した。ところが午後には、アマゾンの好決算と会費値上げを手掛かりにナスダック市場の高PERのグロース株買いが強まると、200ドル超高と切り返し、大引けは21ドル安の小幅続落となり、日中値幅は、またも500ドル超にも達した。

 インフレ・ファイターに変身したパウエルFRB議長は、この過熱した雇用統計を前に3月15日から16日に開催予定の次回FOMC(公開市場委員会)での政策金利引き上げの確信を強めたはずだ。引き上げ幅も0.25%を超えて0.5%となるとも観測されている。NYダウが300ドル超安と売られるのは無理のないところだが、その安値から200ドル超も切り返したのがサプライズとなる。政策金利が2回引き上げられるまでは株高が続くと、あたかも兜町のアノマリーを試しているようにもみえたのである。FOMCの開催は、3月のあと次々回は5月3日から4日に予定されており、アノマリー通りなら4月相場まではリスク・オン相場が続くことになる。またFRBが、政策金利引き上げを加速させたあと早めに打ち止めし、11月の中間選挙前にインフレを封じ込めようという政策的な含意も観測されているようでもある。

 もちろん日中値幅が乱高下するのか、強気と弱気が交錯していることを示唆しており、結果的にどちらが正解か十分に警戒する必要がある。しかし日経平均株価自体は、今年1月の月間1800円安から2月第1週に400円超幅のリバウンドをしたが、なお25日移動平均線を下回ったままだ。ここはかつての兜町のアノマリーを試すのも一法になるのかもしれない。

 とういことで強気と弱気の両方の顔を立て、アノマリーを試す銘柄は二本建てとしたい。一方は、インフレヘッジ関連の資源株、もう一方は、ハイテク株のうち今年1月の月間下落率ランキングの上位にランクインした銘柄の「リターン・リバーサル」である。ここでも「インフレはモノ」、「下げた株ほど良く戻る」とするアノマリーが、有効となる可能性が出てくる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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