【小倉正男の経済コラム】「ジャクソンホール講演」利上げはデータ次第

小倉正男の経済コラム

■総合購買担当者指数はさらに低下

 米国の総合購買担当者指数(PMI)だが、8月速報は45・0となり2カ月連続で50を下回っている。7月に好況・不況の分かれ目といわれる50を割り込んだが、8月はさらに低下している。

 総合購買担当者指数は、一般に景気先行性が高い指標といわれている。製造業、サービス産業とも購買担当者に代表される企業心理は、利上げなど金融引き締めから縮小に転じているようにみえる。とりわけ、サービス産業が低調に転じている。

 生産者物価指数は、7月に前年同月比9・8%上昇にとどまっている。前月比では0・5%低下した。久々の低下で、ガソリン価格などの低下、サプライチェーン正常化が寄与しているといわれている。消費者物価のほうは、7月は前年同月比8・5%上昇、家賃、外食などの高騰が影響している。だが、消費者物価も6月の9・1%上昇に比べるとやや緩和されている。

 7月はインフレのピークになるとみられていたが、インフレの勢いが少し弱くなっている。インフレのピークは越えたようにみえないではない。しかし、依然として高止まりしている。ただ、一方で景気のほうは頭を打って後退の兆しが現れているようにもみえる。

■パウエル議長の「ジャクソンホール講演」

 そんな何とも言えない状況のなか、25~27日に経済シンポジューム「ジャクソンホール会議」(ワイオミング州)が開催される。新型コロナ禍で3年ぶりの対面ミーテイングとなる。焦点は26日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演とされている。

 パウエル議長の講演だが、演題はずばり「経済見通し」。景気、インフレ、利上げについてどのような発言、あるいはニュアンスが出るのか。大枠では利上げなど金融引き締めでインフレを抑制して景気後退はさせない、というような従来からの演目になるとみられる。

 もっとも世間のほうは、米国は景気後退に向かうという懸念論、悲観論のほうに傾いている模様だ。10年物国債利回りが2年物国債利回りを下回るといった「逆イールド」(長短金利の逆転)が折しも点灯している。これも当てにはならないが、「逆イールド」は一般に平均して1年半後に景気後退する前触れとされている。

■データも一進一退

 パウエル議長は、「利上げはデータ次第」と発言している。それはそうに違いないが、利上げによるドル高でインフレを叩くのではないかという真偽不明の観測が出ている。微妙なところだが、インフレがピークを打っているとすれば過剰なドル高はどう作用するのか。

 ただ、このところサウジアラビアが減産を示唆したことで原油価格が1バレル=94ドル台に値を戻している。データも一進一退である。

 ともあれ、米国は市場経済が貫かれており、市場のデータを基本に経済が運営されている。日本の場合は、市場経済なのか何なのか、米国が利上げに走っても何ら動かない、あるいは動けないという状態が続いている。

 生産者物価(企業物価)を消費者物価に転嫁するのが難しい日本で過剰な円安を招けば、それこそスタグフレーションになりかねない。日本はいまだデフレギャップを引きずっている。

 雇用増、そして賃金が相当に上がっている米国ですらスタグフレーション懸念が騒がれている。しかし、日本は「円安は国益」をいささかも変えず、それと心中するようにパウエル議長の「ジャクソンホール講演」を迎えるという経過になっている。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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