【どう見るこの相場】セオリー通りに値幅調整で下値を確かめ日柄調整へシフトなら自己株式取得銘柄に株高先行順位

 『たった四杯で夜も寝られず』とは、幕末の浦賀沖に突如、現れた4隻の蒸気船(黒船・軍艦)に強硬に開国を迫られて慌てふためいた徳川幕府の右往左往ぶりを皮肉った当時の狂歌と伝えられている。前週の世界のマーケットも、これとまったく同じで『たった四杯で夜も寝られず』状態が続き、ワールドワイドな株価の急落が止まらなかった。

 寝られない原因は『四杯』ならぬ『四行』である。シリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャー・バンク、ファースト・リパブリック・バンク、さらに欧州金融大手のクレディ・スイス・グループの4行である。いずれも経営破綻や預金流出、資金調達難などで信用不安が高まって不眠不休のリスクオフの売り物を浴び続けた。ただ前週末には、この四行には、預金の全額保護、資金支援、さらにはクレディ・スイスは、同業のUBSとの合併などの救済策が発動され、日米欧の6中央銀行によるドル資金供給の強化も発表され、週明けの欧米市場は、世界的な金融危機につながるリスクは後退したとして続伸し、彼岸休み前の20日の反落した東京市場とは反応の方向が異なり一安心である。

 先行きは、どうなるのか?投資家心理的には、多分にトラウマ(心的外傷)をどう抑え込むかに掛かっているのかもしれない。あの2008年9月にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻で発生した世界的な金融危機「リーマン・ショック」の痛みが甦るのをどうにか振り払い、わが東京市場でもバブル経済崩壊後の「銀行多死」時代の悪夢を忘れ去り、「朝の来ない夜はない」と言い聞かせなければ、簡単にリスクオフがリスクオンに切り替わらないからだ。その「朝」がいつなのか、何がカタリストになるのかなお不確かで不透明である。日本時間の明23日に発表されるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)の結果も、不眠症をさらに悪化させないように祈るばかりである。

 しかし、前週のマーケットを詳細に点検してみると、売り一辺倒ではなかった。銀行株が軒並みリスクオフの売り物に見舞われた一方で、セオリー通りに安全資産への投資、「質への逃避」は確実に行われていた。安全資産として債券、金、さらに低リスク通貨の円へのシフトが進んでおり、為替が円高・ドル安に進んだことでニトリホールディングス<9843>(東証プライム)などの円高メリット株の逆行高、さらに米長期金利の低下位を背景としたハイテク株高なども目立っていた。こうした相場セオリーが有効とすれば、今回の金融システム危機懸念で先行した値幅調整がコツンと底を打つ音がしてほぼ終了し、次いで戻り売りを吸収しつつ出直りを探る日柄調整ステージを入るとも想定される。

 この出直りは、下値を確認した銘柄からとなるはずである。そこで下値確認銘柄の有力候補として注目したいのが、自己株式取得株である。マーケットで最後の買い手となるのは、日本銀行のETF(上場投資信託)と上場会社自らによる自己株式取得であり株価防衛への援軍となる。なかでも自己株式取得は、外部環境の好悪に関係なく「天は自ら助くる者を助く」の諺通りに自らの株高推進運動をサポートし、株高先行順位の上位を占めると想定される。

 自己株式取得の株高先行順位効果を大きくアピールするキー銘柄は、もしかしたら大日本印刷<7912>(東証プライム)とも考えられる。同社株は、今年3月9日に自己株式取得(取得上限4000万株、取得総額1000億円)と自己株式消却、中期経営計画を発表し、中期経営計画ではROE(株主資本利益率)10%とPBR1・0倍超、自己株式取得ではさらに2000億円の上乗せを目標とており、これは今年2月に同社大株主に浮上した物言う株主への一発回答との見方も強い。

 株価は、今年1月の昨年来安値2497円から窓を開ける三段上げで上場来高値4160円まで約7割高し、金融システム不安による世界同時株安のなか3560円まで急落し25日移動平均線を出没し下値を確かめているが、今年6月の定時株主総会へ向け期末の需給思惑が高まるようなら、自己株式取得株の株高効果期待へ広く波及する可能性もある。同社の動向を横目で睨みながら、取得総額の大きな自己株式取得銘柄、発行済み株式総数に占める取得比率の高い小型自己株式取得株などをマークしたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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