【編集長の視点】カーリットホールディングスは年初来高値に肉薄、業績上方修正をテコのバリュー株買いに地政学リスク関連人気オン

■宇宙・防衛・ゼロカーボンの多彩なテーマ性で株価も再発進

 カーリットホールディングス<4275>(東証プライム)は、前日11日に7円高の970円と4営業日続伸して引け、取引時間中には995円と買われ場面があり9月14日につけた年初来高値1020円に肉薄した。9月11日に発表した今2024年3月期業績の上方修正で、純利益が、2期ぶりに過去最高を更新することを見直しバリュー株買いが増勢となった。また今年8月3日には固体ロケットの推進薬の原料となる過塩素酸アンモニウムの増産計画を発表しており、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争状態に入ったことによる中東の地政学リスクに関連する防衛株人気も、側面支援材料視されている。

■経済活動正常化で自動車用緊急保安筒、花火大会用の煙火などが好調推移

 同社の今3月期業績は、第2四半期(2023年4月~9月期、2Q)累計業績、3月期通期業績が同時に上方修正された。このうち3月期通期業績は、売り上げを期初予想の据え置きとしたが、営業利益を4億5000万円、経常利益を5億円、純利益を3億円それぞれ引き上げ、売り上げ380億円(前期比5.5%増)、営業利益31億5000万円(同19.3%増)、経常利益34億円(同16.5%増)、純利益26億円(同15.7%増)と見込んだ。純利益は、2022年3月期の過去最高(23億3600万円)を2期ぶりに更新する。電子材料やシリコンウエハは、半導体需要の低迷の影響を受けているが、その他事業では経済活動正常化とともに自動車用緊急保安筒、花火大会用の煙火、過塩素酸アンモニウムへの防衛需要の増加、缶飲料充填のボトリング事業などが好調に推移し、業務改善、原価低減推進、適正価格維持の販売継続などが加わったことが要因となった。なお上方修正幅は、2Q累計業績より通期業績の方が小幅にとどまる慎重見通しとなっており、業績の再上ぶれも期待される。

 一方、H-ⅡA/Bロケットや防衛産業関連の固体推進薬の原料である過塩素酸アンモニウムの増産は、生産能力を現在の2倍~3倍に増強するための計画に本格着地し、今年11月から第1期計画を開始する。地政学リスク関連材料として見直されている。またNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からは「クリーン水素」を製造する新規触媒の共同開発が事業採択されている。宇宙・防衛・ゼロカーボンなどの多彩なテーマ性を誇っていることも、業績の成長期待や株価押し上げ材料として注目されている。

■PER8倍、PBR0.6倍の修正に再発進し年初来高値抜けから上場来高値も意識

 株価は、今期第1四半期の好決算で800円台を回復し、過塩素酸アンモニウムの増産計画で877円まで上値を伸ばし、今期業績の上方修正とともに年初来高値1020円をつけた。同高値後は全般相場波乱の波及で800円台まで急落し、売られ過ぎ修正で前日の995円高値までリバウンド幅を拡大させた。それでもPERは8.8倍、PBRは0.69倍と割安であり、年初来高値1020円を上抜き、次の上値フシとして2018年1月につけた上場来高値1399円も意識されよう。(情報提供:日本インタビュ新聞・株式投資情報編集長=浅妻昭治)

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