【揺れる世界経済】トランプ政権の「マッチポンプ外交」が生み出す国際的波紋

■仕掛ける火と消す水―自作自演に翻弄される国際市場

 「マッチポンプ」という言葉をご存知だろうか。自らが火をつけておきながら、同じく自分でポンプの水をかけて消すという、自作自演の偽善的行為を表す和製英語である。この表現こそ、現在のトランプ大統領の貿易政策を完璧に言い表している。

 トランプ大統領は就任以来、「タリフマン(関税男)」の異名にふさわしく、カナダ、メキシコ、そして中国に対して次々と追加関税を発動してきた。相手国が報復関税で対抗せざるを得ない貿易戦争を仕掛けながらも、実際の発動直前になると突如、猶予期間の設定や対象品目の見直しを発表するという手法を繰り返している。

 この予測不能な政策転換に国際市場は振り回され続け、上昇と下落を繰り返しながら、トランプ流「ディール(取引)」の手法に翻弄されているのだ。

■拡大する不確実性―市場に映る懸念の影

 この「マッチポンプ外交」は貿易政策にとどまらない。ウクライナ・ロシア間の和平問題、中東のパレスチナ問題といった地政学的リスク、さらには為替相場にまで及び、経済の先行きに対する不確実性だけが日に日に強まっている。

 こうした不安定な状況を反映し、ニューヨークダウ平均株価は、前週末に222ドル高と持ち直したものの、トランプ大統領の就任式翌日と比較すると約1200ドル安、大統領選挙で当選が確実となった時点からも約930ドル安という水準にとどまっている。

 市場関係者の間では、この「マッチポンプ」の繰り返しがインフレの再燃と米国経済の減速をもたらすのではないかという懸念が日増しに強まっているのが現状だ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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