【マーケットセンサー】不動産株は眠れる資産か?セオリー逆転の市場を読む

■低金利でも動かぬ不動産株、市場心理のねじれ

 国内株式市場では、日本銀行の低金利政策が続いているにもかかわらず、不動産株の動きは総じて冴えない。一方で、本来は利ザヤ縮小が懸念される銀行株が上昇基調を強め、主要銀行を中心に株価が高値圏で推移するという逆転現象が鮮明になっている。投資理論上、不動産株は低金利環境で資金調達コストが抑えられ恩恵を受けやすい。しかし現実の市場では、資金はAI(人工知能)や半導体といった成長テーマに集中し、不動産株は割安のまま放置される展開が続く。この「セオリー通りに動かない相場」は、投資家心理に迷いをもたらし、資金循環の歪みを浮き彫りにしている。

■実物市場は堅調、海外マネーと富裕層が下支え

 とはいえ、不動産市場そのものは堅調だ。基準地価は全国的に上昇傾向を維持し、国内外の資金が都市圏を中心に流入している。特に海外投資家は、割安な価格と安定収益を背景に、日本の不動産へ長期資金を向けている。円安が進むことで海外から見た日本の物件価格はさらに低く映り、取得コストの優位性が高まっている。また、海外勢だけでなく国内富裕層の不動産需要も根強く、資産保全や相続対策としての投資が継続している。不動産株の株価が伸び悩む一方で、実物市場には確かな需要と資金の流れが存在する。

■次の主役となる条件、割安株に資金巡る兆し

 今後注目されるのは、割安・高配当・業績成長という三要素を併せ持つ不動産関連株の再評価である。PER10倍以下の銘柄、増配や業績上方修正を発表した企業、不動産流動化や不動産テックに関連する企業群など、素材は揃っている。銀行株が先に資金を集めたように、相場の潮目が変われば次の物色対象は不動産株になる可能性が高い。市場は今、成長株かバリュー株かという二極の間で揺れているが、埋もれた不動産株こそ「逆転のセオリー」を体現する存在となるかもしれない。安定した地価、海外マネー、割安感の三点が揃うなか、静かに資金が巡り始めている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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