
【先人の教えを格言で解説!】
(犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に残した相場格言を定期的に紹介。)※最新の情報に修正を加えてあります
■人の健康も株も複合的要因で動く
子どもが体調を崩したとき、親は「熱」「のどの腫れ」「顔色」などを見て状態を把握しようとする。これは株式に例えれば、「業績」と「チャート」だけで判断しようとする行為に近い。いずれも一面を見ているにすぎず、全体像を捉えているとはいえない。病気も株も単純ではない。
成人なら誰しも一度や二度は病院で検査を受けたことがあるだろう。機会があれば、医師にお願いして検査データを見せてもらうとよい。そこには、英字や数字が並ぶ「生化学」検査の結果が詳細に記されている。
たとえば「HbA1c」は血糖値の平均を示すデータである。昔は、野外で排尿した際に蟻が寄ってくると「糖が出ている」と判断されたといわれる。近所の医師に空腹時血糖値を調べてもらうこともあるが、それはその日限りの数値にすぎない。HbA1cは1か月間の平均値であり、より傾向を表す。株価にたとえれば、「当日の株価」と「30日移動平均値」の違いに近い。傾向を示すのがHbA1cである。「当日血糖値」は70~110、「HbA1c」は4.3~5.8が正常値とされる。仮に当日値が正常でも、1か月平均で基準を超えていることは多い。禁酒や節制をすれば一時的に数値は良くなるが、日常的に食べすぎ飲みすぎがあれば血中に糖が蓄積していく。
株価も同様である。日々の値動きに一喜一憂してばかりでは、全体の傾向を見失い、防げたはずの大暴落(大病)に巻き込まれることがある。人にとって最も大切なのは命であり、次にお金だろう。いずれも過度に神経質になる必要はないが、大切にすれば必ず応えてくれるものである。
年齢を重ねたら、健康も株も総合的に見る習慣を持ちたい。投資経験が豊富な人でも「業績さえ見ておけば安心」と考える傾向があるが、株価はそれだけでは決まらない。上昇率、下落率、日数の推移、信用残高、PER、利回り、テーマ性など、多様な要因が絡み合って動く。業績は重要な指標の一つだが、それのみで判断できないことを心に留めておくべきである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)























