
■超大規模データ処理に強み、Graph500で新記録達成
理化学研究所、東京科学大学、フィックスターズ<3687>(東証プライム)、NTT(日本電信電話)<9432>(東証プライム)、富士通<6702>(東証プライム)による共同研究グループは6月10日、スーパーコンピュータ「富岳」を用い、国際的な性能ランキング「Graph500」の幅優先探索(BFS)部門において、11期連続となる世界第1位を獲得したと発表。今回のスコアは204.068 TeraTEPSであり、「富岳」の152,064ノード(全体の約95.7%)を活用し、約8.8兆個の頂点と140.7兆個の枝から成る超大規模グラフの探索を平均0.69秒で実施した。省メモリ化や自動シード探索といった独自技術が、これまでにない規模の問題解決と高性能化に貢献した。発表はドイツ・ハンブルクで開催中の国際会議「ISC High Performance 2025」にて行われた。
この成果は、実社会の複雑な構造を高速に解析する手段としてのグラフ解析の価値を改めて示したものとなる。SNSにおける関係性の可視化や、IoTデータのリアルタイム解析など、応用先は多岐にわたる。Society 5.0の実現に向けた新たな産業創出や資源の最適化にもつながる可能性が高い。「Graph500」はこのような多様な分野で活用可能なグラフ処理能力を競う指標であり、「富岳」はその中でも、科学技術計算における規則的な処理に加え、不規則なグラフ構造の計算でも優れた性能を持つことが実証された。
共同研究グループは、今後も前処理による計算負荷の軽減や、通信性能の最適化、アルゴリズムの自動チューニングなどに取り組む方針である。これまでに開発されたソフトウェア技術(冗長探索削減、圧縮処理、自動乱数チューニングなど)は、今後のグラフ解析分野における基盤技術として期待されている。また、こうした成果は、SDGsの「産業と技術革新の基盤を作ろう」「住み続けられるまちづくりを」の目標達成にも寄与するものであり、日本のHPC分野における国際的な競争力を一層高める結果となった。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)