東京証券取引所、IR体制強化へ投資者の声を公開、上場企業へ「対話重視」のIR促す

■形式的IRからの脱却を、企業価値向上へ実効性求める投資家

 東京証券取引所(東証)は7月22日、「IR体制・IR活動に関する投資者の声」を公表した。これは、全上場会社に対し義務付けている株主・投資家との関係構築のための情報提供体制(IR体制)整備に関し、国内外の投資家から寄せられた具体的な意見をまとめたものだ。最低限の体制整備に留まらず、より実効性のあるIR活動の充実を求める声に応え、上場会社がIRのあり方を検討する際の参考となるよう作成された。

 同資料では、投資家が企業に何を期待しているか、改善が求められる事例、そして評価される優れた事例が具体的に示されている。投資家は、経営者やIR部門が自らの言葉で中長期的な経営戦略や将来ビジョンを発信し、双方向の対話から得たフィードバックを経営課題として企業価値向上に繋げることを強く求めている。形式的なIR体制の設置だけでなく、資本コストや株価を意識した経営の一環として、実質的なIRの取り組みを進める重要性が強調されている。また、経営を監督し株主の立場を代弁する社外取締役とのコミュニケーションへの期待も高い。

■経営陣と社外取締役の積極関与が鍵、具体的な事例で改善促す

 具体的な改善が期待される事例として、IR専門部署の不在や経営陣の関与不足が挙げられる。管理部門がIRを兼務し面談を断るケースや、経営陣と担当部署の説明に齟齬が生じる事例も指摘された。また、IR説明会が対面参加者のみに限定されたり、質疑応答部分が公表されないなど、公平な情報提供を阻害する運用も改善が求められている。合理的な理由なく個別面談に応じない姿勢や、社外取締役との対話機会が不足している点も課題とされている。これに対し、評価される事例として、IR専門部署の設置、経営陣直轄のIR体制、海外投資家向け対応の強化、説明会資料の充実と早期公開、質疑応答を含む公平な情報開示などが挙げられ、東亜建設工業やダイト、富士通などの取り組みが紹介された。

 東証は、上場会社がIR活動を通じて企業価値向上に取り組む姿勢を評価しつつ、投資家側にも建設的な対話を求める。投資家には、事前の十分な企業リサーチに基づき、中長期的な経営戦略等に関する自身の視点を明確に伝え、充実した議論に繋げるよう期待を寄せている。これにより、企業と投資家双方の努力で、より質の高いIR活動が推進され、資本市場全体の活性化に繋がることを目指すものだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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