【どう見るこの相場】トランプ氏「最大70%関税」示唆、日本株は4月の悪夢再来か?

■日米関税交渉、7月9日に運命の日「90日猶予」迫る潮目

 「三日、三月、三年」とは、潮目、変わり目を言い表す常套フレーズである。その3カ月目の潮目の7月9日をあと2日後に迎えるのが、まだ合意に至っていない日米関税交渉である。米国のトランプ大統領が、相互関税のうち上乗せ分の発動を90日間一時停止していたが、この最終期限がこの日となる。この日を境に「日米関税交渉2.0」となり、先行きはますます不透明化しそうである。落としどころ、一致点がまるでみえない。

■日米関税、激化の危機!トランプ氏「最大70%」示唆で日本株は4月の悪夢再来か

 熟議に熟議を重ねて長期戦も辞さない日本政府サイドは、もちろん停止期間の延長を視野に入れているはずだ。あるいは中国のレアアースの輸出規制の反撃にあって妥協したことでも明らかな、いわゆるトランプ大統領の「TACO(トランプはいつも尻込みする)」に期待する部分もあるのかもしれない。とくに国内政局は、前週4日から17日間の参議院選挙の選挙期間に入り、石破茂内閣にはプレッシャーとして働く。衆議院で少数与党となった石破内閣としては、弱腰をみせて国益を損ねるようなことになれば、参議院での過半数割れの懸念がより強まり兼ねず、粘り腰を発揮しなくてはならないところだろう。

 しかしトランプ大統領は、真逆のようである。記者やテレビカメラの前で、相互関税の関税率は当初発表の24%から30%~35%引き上げると発言したり、前週末4日には相手貿易国12カ国に新たな関税率を通知するための文書に署名し、7日に送付することを明らかにしており、その新関税率は、すでに10%~70%と幅広くなり8月1日から発動することも示唆していた。米国議会で可決しトランプ大統領が署名した減税・歳出法案の財源確保のための相互関税との見方もあり、そうであればまるで貿易相手国への奉加帳であり、確信犯的である。その12カ国に日本が含まれさらに関税率が引き上げられるケースでは、あの相互関税発動後の今年4月7日の日経平均株価の2644円安、取引時間中の1年5カ月ぶりの3万1000円大々台割れの再現も覚悟しなければならなくなる。

■TACOトレード再燃か?日米株価高値更新の裏にトランプ氏の「朝令暮改」期待

 こうなるとマーケットとしては、せめて「TACOトレード」に期待する以外にない。「TACOトレード」とは、トランプ大統領が、強行な政策を発表直後に一転して朝令暮改のように柔軟な政策変更をすることを先取りし、ショック安後のサプライズ高に期待する投資スタンスを指す。そういえば今回も、相互関税の猶予期間切れ前に日米の株価とも大きく上値を伸ばした。米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)は、年初来高値を更新し、日経平均株価も、5カ月ぶりに4万円大々台を回復して年初来高値を更新した。4月月初の世界的な「トリプル安」とは別コースを辿るのか注目されるところである。

 「TACOトレード」再現を切望するとして、次の問題はその注目銘柄である。中心になるのは、米国市場のコピー相場が強まる可能性にある半導体関連株だろう。というのも、トランプ大統領が署名した減税・歳出法には、米国国内で工場を建設する半導体メーカーなどへの税額控除の拡大措置が盛り込まれているためだ。またまた「エヌビディア祭り」がヒートアップしそうだ。

■ディフェンシブ株に脚光、「トランプ・ディール」回避で買い殺到

 第2の有望株は、「トランプ・ディール(取引)」の影響度が、相対的に薄い内需関連のディフェンシブ株だろう。そのトップバッターとして要注目は、電力株・電力関連株だろう。前週末4日も、電力・ガス株は業種別株価指数の値上り率ランキングのトップになり、個別銘柄ベースでも年初来更新銘柄のなかに3銘柄が含まれ、東証プライム市場の値上り率ランキングのトップ50位には6銘柄がランクインする人気業種となった。

 しかもこのカタリスト(株価材料)が、7月2日に日本経済新聞で報道された関西電力<9503>(東証プライム)と東京電力ホールディングス<9501>(東証プライム)のデータセンター向けの送電網増強投資となっているから、生成AI(人工知能)需要拡大に絡む「エヌビディア祭り」関連株の一角を占めることにもなる。先行する値がさ半導体株とは異なり、投資採算的に低PER・PBR、高配当利回りのバリュー株のオンパレードでもあり、買い乗せ、順張り、逆張りとバラエティ豊かに対処できそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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