
■原材料高騰と人手不足、価格転嫁困難で倒産拡大
東京商工リサーチは8月23日、「粉もん」と呼ばれるお好み焼き・焼きそば・たこ焼き店の倒産件数が過去15年間で最多ペースにあると発表した。2025年1~7月の倒産は17件で前年同期比30.7%増となり、2011年以降の同時期で最多を記録した。年間では2020年を上回り、過去最多を更新する可能性がある。業態別ではお好み焼き屋が14件と8割超を占め、地域別では大阪が6件で最多となった。大阪万博やインバウンド需要で集客は好調だが、競争の激化とコスト上昇が小規模店舗を直撃している。
倒産の背景には、円安を背景とした原材料の高騰や人件費・光熱費の上昇がある。農林水産省の調査では、小麦粉や油、ソースといった主要食材の価格が年々上昇しており、価格転嫁が困難な小規模店ほど経営を圧迫している。負債1億円未満の小・零細店舗が76.4%を占めており、値上げが客離れを招く懸念から対策が遅れがちだ。販売不振が倒産要因の7割超を占め、他社倒産の連鎖や過大投資による経営悪化も散見される。
さらに、観光需要の回復に伴いインバウンド客が増える中で、味の改良や店舗改装、SNSを活用した集客といった投資余力やノウハウ不足が目立つ。庶民の味として親しまれてきた粉もんは、価格競争力の低下と人手不足により存続が危ぶまれる状況にある。秋の観光シーズンを控え、倒産件数は増勢をたどっており、地域の食文化や観光資源への影響が懸念されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)