
■自民・維新連立協議で株価急騰、政策期待が相場を押し上げる
日経平均株価は10月20日午前、1222円高の4万8805円まで上昇し、取引時間中の最高値を更新した。自民党と日本維新の会の連立協議進展に加え、前週末の米国株高が追い風となった。東証33業種がそろって上昇し、その他製品、保険、輸送用機器の上げが目立った。市場では「高市トレード」と呼ばれる政治相場が再び勢いを増している。高市早苗氏が自民党総裁に選出された直後には2175円高と急伸し、史上最高値4万8580円をつけたが、公明党の連立離脱で1241円安と急落。その後は日本維新の会との政策協議を材料に急反発を続け、乱高下が続いた。
象徴的なのは核融合関連株の助川電気工業<7711>(東証スタンダード)である。同社株は高市総裁選出とともに3日連続のストップ高を交え8410円まで急騰。その後1600円下落し6820円まで反落したが、再び1500円高の連続ストップ高で9460円まで上昇した。前週末には8540円から9840円まで大引けにかけて値を戻し、日中値幅は1300円に達した。日経平均が「金曜日の引けボケ」を示す一方、助川電気は「引けピン」となり、週明けの株高を示唆するとの見方も出ている。
■金融政策決定会合を控え波乱含み、物価上昇と金利動向に注目
注目されるのは、21日の臨時国会で行われる首班指名選挙である。自民党と日本維新の会の連立合意が固まれば、高市新政権の発足が確実視される。女性初の総理誕生が実現すれば、政治・経済両面で新たな局面を迎えるが、市場では閣僚人事に注目が集まる。自民党執行部人事で派閥均衡や論功人事が批判を浴びた経緯から、閣僚人選が強硬路線に傾くのか、穏健姿勢をとるのかで相場の方向性が変わるとの指摘がある。
さらに焦点は10月29~30日に予定される日銀の金融政策決定会合である。9月会合では現状維持が決定されたが、2名の審議委員が反対票を投じた。消費者物価は依然高止まりしており、コメや野菜の価格上昇も続く。政策金利の維持か引き上げかにかかわらず、金融緩和を重視する高市新政権と日銀とのスタンスの違いが注目される。トランプ前米大統領のように政治が中央銀行の独立性に踏み込む構図となるか否かが焦点だ。ここでも相場は一段と揺れ動く公算が大きい。
■高配当銘柄に資金シフトも、権利取りを狙う静かな動き
一方、短期急変動の高市関連株に振り回されたくない投資家は、配当取りを目的とした「高配当株」へ視線を向けている。10月決算期を迎える高配当銘柄は希少で、利回り3%以上は全体の約1.4%にとどまる。ナレルグループ<9163>(4.81%)、AB&Company<9251>、学情<2301>、萩原工業<7856>、泉州電業<9824>などが注目される。なかでものむら産業<7131>は米穀袋需要好調で増配、AB&Companyは配当性向を50%以上に引き上げた。さらに業績下方修正後も配当を据え置いた土屋ホールディングス<1840>や泉州電業なども評価が高い。
また4月期決算企業の中間配当狙いでは、ヤガミ<7488>(5.67%)、ノバック<5079>、ダイサン<4750>、神島化学工業<4026>、ナ・デックス<7435>などが候補となる。ヤガミは7期連続の増配で今期年間252円配当を予定。神島化学やナ・デックスなどはPBR1倍割れのバリュー株としても注目されている。政策相場の熱気と高配当株の安定感が交錯するなか、投資家は高市トレードの波をどう乗りこなすかが問われている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)