日米とも長期波動で捉える局面、日本は次の政策一手にかかる、10年間で28兆円売り越し余裕の個人の動向もポイント=犬丸正寛の相場展望

犬丸正寛

 日米の相場とも長期サイクルの中で捉える局面のようである。先ず、NYダウは2009年から2015年まで6年間上昇した相場の調整、一方の日経平均はNYダウが09年に底入れした後もモタつき、安倍政権が誕生した12年暮れをボトムに上昇に転じ昨年まで3年間上昇した調整局面といえる。

 アメリカはオバマ政権下で3度の量的緩和で経済が再生、NYダウは09年の6469ドル(場中値)から昨年5月の1万8351ドルまで約2.8倍(値上り幅約1万1832ドル)上昇した。そのオバマ政権は14年の量的緩和終了に続いて昨年暮れ利上げに踏み切りオバマ経済政策総仕上げとした。そのオバマ政権が今年交代するのだから、これまでの6年間の上げに対する調整と、次期政権が誰になり、どのような政策を見守るというのが現状だろう。

 アベノミクスも昨年暮れで3年が経過。アベノミクス第1章が終り、続く第2章本格化までの今は休養期間ということだろう。

 調整目安としては、上げ幅の3分の1押し、半値押しが用いられる。NYダウの、「3分の1押し」は1万4391ドル。12日は場中で1万5503ドルまで下げたから、ここから下げるとしてもあと1100ドルほどである。しかも、注目されるのは、12日終値では安値更新だが、場中値では去る1月20日の1万450ドルは下回っていないことである。こうした場中値と終値に違いの出るときは相場が下値水準に来ているケースは多いのである。

 一方の日経平均は12日場中安値が1万4865円と、12年暮れの9946円から15年6月の2万0952円まで2.1倍(上昇幅約1万1000円)上昇に対する、3分の1押し水準を既に下回り、さらに、「半値押し」(1万5449円)さえも下回っている。明らかに、NYダウに比べ動きが弱い。なぜだろうか。

 アメリカは3度の量的緩和を実施し景気に大きい効果をもたらしたが、日本の場合は、今回、マイナス金利政策を打たなくてはいけないほど金融面からの策が限界に来ているとみられている。これが、日経平均の下げを大きくしているといえる。とくに、アメリカは景気面への配慮でオバマ政権で続いたドル高を続けることはできないからドル安政策に傾いているであろうことは予想される。ドル安の裏返しで円高が日経平均の下げを大きくしていることは言うまでもない。これからも、ドル安・円高がつづくと日本株の重しになる。

 日米とも景気・企業業績に頭打ち感が出ているが、しかし、日米とも直ちに急速に悪化するということではないだろう。足元のEPSは日米ともまだしっかりしている。課題は、今後、景気に対しどのような策が打ち出されるかである。

 アメリカの場合、政権交代までの空白期間を考えると大きい策は考え難い。ドル安を容認する政策にとどまるのではなかろうか。日本はアベノミクス第1章に比べ第2章はパンチ力に欠ける印象は避けられず、もう一度の量的緩和は予想されるがどこまで効果があるか大きい期待は難しそうである。もしも、このまま、円高が進むようなら日経平均の上値は厳しくなり戻り売り基調が鮮明となりそうだ。

 ただ、日本の企業業績は足元ではしっかりしており、仮に、17年3月期が不振見通しとしてもそれが表面化する5~6月までは時間的余裕がある。アベノミクス第1章で潤った企業の増配が相次いでいることから利回りはアップし魅力的となっている。2016年3月期の高利回り銘柄の配当取りは注目してよいと思われる。

 とくに、この10年間で約28兆円売り越し余裕のある個人投資家が、この下げで再び買いに出てくるかどうか大きいポイントとなりそうだ。そのためにも、安倍総理の先行きに希望と夢を与える思い切った政策がよりいっそう求められるところだろう。

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