【どう見るこの相場】政策金利据え置きの「日銀トレード」を手掛かりに不動産流動化関連株に逆転のセオリー高を期待

■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に

 株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日の取引時間中に発表された日本銀行の金融政策決定会合の結果を受けた不動産株の高安マチマチ、小幅高である。政策金利が6会合連続で据え置きとなり、投資セオリーからすれば住宅ローン金利の引き上げなどが回避され追い風となり「カイ」の呼応のはずなのだ。10月29日にアドバンテスト<6857>(東証プライム)が、ストップ高して1銘柄で日経平均株価を1077円も押し上げたような高望みはが無理なのは重々承知だが、それでも業種別上昇率はわずか0.68%にとどまった。逆に利ザヤ拡大期待がカラ振りとなり、投資セオリーからは逆風となるはずの銀行株が、1.89%上昇し業種別上昇率で第4位にランクインしており、それに比べてもその他大勢の馬群に沈んだと言わざるを得ない。

■銀行株10行が高値更新、投資セオリー逆転の展開

 しかも銀行株では、メガバンク、地銀株を含めて10行が、上場来高値・年初来高値を更新したのに対して不動産株で年初来高値を更新した銘柄は、プロパスト<3236>(東証スタンダード)1銘柄にとどまった。不動産株にとっては追い風、銀行株にとっては向かい風となる投資セオリーが、セオリーと逆に動くのを目にすると、「AI(人工知能)関連株に非ずば株に非ず」とする一極集中型相場に乗り遅れた投資家は、余計に気迷い折角、日経平均株価が最高値追いとなっているのに踏ん切りがつかずみすみす指をくわえて市場参加を見送らざるを得ないかもしれない。

■海外投資家の1兆1400万円投資が市場を牽引

 投資セオリーの逆回転は、もちろんAI関連株が、ブラックホールのように投資マネーを吸い込みバリュー株売り、AI関連株買いへの乗り換えを激化させている需給要因が大きな要因だろう。ただ不動産株については、高市早苗首相が、自民党の総裁選挙から過日の臨時国会の所信表明演説まで外国人規制強化や海外投資家の土地取得のルールつくりを訴えてきたこともあるいは一因かもしれない。9月16日に発表された2025年の基準地価は、全国全用途で1.5%上昇と4年連続で上昇したが、これを牽引したのが国内外の投資マネーであり、とくに海外投資家は、今年1月~6月の上半期に1兆1400万円の不動産投資を行い上半期として過去最高となったと伝えられている。海外市場に比べて割安で好収益が期待できる日本の物件に大挙買い出動しているもので、この地価上昇が、不動産株全般の業績も押し上げている。

■ドル高で日本不動産が割安感、富裕層需要も下支え

 高市首相の外国人規制がどう推進されるか、不動産株にとって「高市セール」に一変するリスクも否定できないが、このマイナス材料をカバーするプラス材料もある。その一つは、円安・ドル高の進行である。日銀の政策金利据え置きで10月30日は為替相場が一時、1ドル=154円台と8カ月ぶりの円安・ドル高となった。「安い日本の不動産」がドル高効果で外国人投資家がより安く取得できることになる。また高市内閣で外国人規制が進行するとしても、海外投資家に並ぶ国内富裕層というもう一つの需要主体があり、政策金利据え置きで海外投資家の買い敗けしない積極姿勢が期待できるはずである。

■割安・増配・成長性、不動産株に資金循環の兆し

 11月相場も、3連休前の前週末31日にハイテク株の業績上方修正が相次いだことなどから、日米が呼応した「AI祭り」に牽引されてさらに最高値追いとなる展開が有力だろう。そのなかで今週の投資コラムでは、敢えて政策金利据え置きの投資セオリーをカタリスト(株価材料)とする「日銀トレード」関連の不動産株に注目することにした。30日に高値を更新した銀行株は、低PER・高配当利回りのバリュー株が中心となったが、不動産株にもいくらなんでも評価不足のPER10倍以下の超割安株が、ゴロゴロと目白押しであるからだ。業績を上方修正した銘柄、増配銘柄、不動産流動化関連株、不動産テック関連株などなかからお宝銘柄を掘り出す逆転のセオリー高も、期待したいところである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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