新年度相場お決まりの年初来高値更新の新高値株は第2段ロケット発射で弾みをつけて昨年来高値を目指す=浅妻昭治

編集長の視点

 新年度相場は、厳しいスタートとなった。前週末4月1日の日経平均株価は、595円安と大幅続落し、東証1部の時価総額は、半月ぶりに500兆円台を割り、全国各地から「桜満開」のニュースが相次ぐなか、ひとり兜町だけが「桜散る」の花模様となった。この株価急続落の引き金は、1日寄り付き前に発表された日銀短観(3月調査)の業況感の悪化にあるとされた。確かに大企業製造業の業況判断指数は、プラス6と昨年12月調査のプラス12から後退し、市場予想のプラス8も下回った。しかし、マーケットがそれ以上に懸念したのは、同時に同短観で示された2016年度の想定為替レートの1ドル=117.46円だったと睨んでいる。

 同日朝方の為替レートは、1ドル=112円台で、その後、前週末の海外市場時間では111円台半ばまで円高が進んでおり、想定為替レートとのギャップは、さらに広がっている。折から企業は、前2016年3月期決算の集計に取り掛かり、続く2017年3月期の業績見通しを策定するタイミングにあり、主力輸出株を中心に先行きの業績不安を一段と強めたことが売りを加速させた側面が強かったはずだ。

 ということは、3月末以来の株価急落の震源地は、今回の日銀短観の影響より今年3月29日に開催されたFRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長の講演にあると推定される。同議長は、同講演で、「政策金利の調整を慎重に進めるのが適当だ」と発言し、それまで早期利上げを訴えた各地区連銀総裁のタカ派的な発言とは真逆のハト派的な講演内容となり、それまでの為替の円安・ドル高が、いっぺんに円高・ドル安にひっくり返ったからだ。となれば、株価の先行き不透明感は、4月26日~27日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)でFRBがどのような政策金利引き下を見送るのか、これを受けて日銀が、4月27~28日に開催する金融政策決定会合でどのような対応策を打ち出すかを確認するまで続くことを意味している。いずれにしろ新年度相場は、スタートから難題を抱え込んだことになる。

 「桜」を散らす花冷えや雨風の強まらないことを祈るばかりだが、そうしたアゲインストな相場環境下でも、桜の「つぼみのふくらみ」や開花」、「満開」期待させてくれる銘柄がある。年初来高値更新銘柄である。新年度相場では、高値更新銘柄のカウント(算出)について毎年お決まりの基準変更がある。高値更新株は、4月1日を境に更新する高値が、昨年来高値から年初来高値に変わる。分かりやすくいえば、新高値株は、昨年来高値銘更新銘柄に年初来高値更新株を上乗せしてカウントされることになり、相場全般が、昨年2015年から今年2016年にかけ調整色を強めているようなケースでは、高値更新のハードルが低くなり、新高値株の銘柄数が増加する可能性が高まることになる。

 ところが前週末1日の新高値株は、全市場ベースで3月31日の60銘柄から51銘柄へ減少した。日経平均株価が、594円安と大幅続落しただけに当然の結果だが、実は、この新高値株に新たにカウントされた年初来高値銘柄の31銘柄が含まれ、昨年来高値更新銘柄は、20銘柄に過ぎなかったのである。基準変更がなければ、市場のセンチメントの悪化をさらに深刻化させたことになった。ただ、この年初来高値更新銘柄は別の観点から評価すれば狙い目もみえてくる。真性の新高値銘柄である昨年来高値更新の20銘柄に比べれば、高値をつけたハードルが低いだけになお割り負け感があり、年初来高値を更新しても株価到達感はなお弱い。しかも、今年2月につけた昨年来安値から3割高、4割高し、昨年来高値からの調整幅の半値戻し、3分の2戻し水準までリバウンドしている銘柄も含まれている。年初来高値更新で弾みをつけ「つぼみのふくらみ」から「開花」、「満開」へと第2段ロケットを発射する銘柄とも評価できるわけだ。そこで年初来高値更新銘柄31銘柄のうち、バリエーション的に割安な11銘柄に絞ってアプローチすれば応分の投資リターンが期待でき、強気スタンスも一考余地があることになる。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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