【小倉正男の経済コラム】「希望の党」緑の風は吹いているか?

小倉正男の経済コラム

■風は止んでいる

 緑の風は吹いているか??
 小池百合子・東京都知事の風が吹き荒れると思われていたが、このところ止んでいる。

 民進党を丸呑みするのは、看板の付け替えといわれるし、イメージもよろしくない。それでは、左派というかリベラル派というか、それらを排除する、としたあたりから風向きが変わった。

 丸呑みすれば民進党亜流となるし、排除すればそれはそれで国政に携わる者としては器が小さいと論評される。苦しいところである。

 三役経験者、すなわち首相経験者は、希望の党への合流を遠慮してもらいたい、といえば「先に離党した人の股を潜る気はまったくない」と反撃されることになった。
 韓信の股潜りも偉いが、野田佳彦元首相の股潜り拒否も偉い。「下克上」がいわれることになった。

 離党したのが早い、遅い、役職をやった、やらなかった――。なんとも細かい線引きであり、昨日の友は今日の敵といった事態である。そうしたことで、風向きも日々変わっている。

■局員はリベラル派、コメントは保守派という奇妙なバランス

 いまは風が凪いでいる状態で、しいて言えばメディア、田崎史郎氏などのコメントが風となっている。

 メディアの社員、局員はリベラル派だが、外部からのコメントは保守派が担当して、奇妙なバランスでやっている。

 メディアを視聴している一般の人々も、政治には散々騙されてきているだけに少しは疑い深くなっている。
 それでもメディアはリベラルに過度に傾き過ぎたり、急に保守となったりと忙しいが、どうなることやら・・・。

 風を吹かせるべき政党がなく、メディアがリベラルだ、保守だと、人々をあたかも「啓蒙」するのは不遜な感がある――。メディアは事実をベースに報道してほしいものである。

■民進党が一夜にして崩壊・消滅

 最大の驚きは、民進党の崩壊だった。日本のリベラルの牙城が一夜にして消滅したのだから、これは何だったのだろうか、と。

 歴史的なアナロジーを見つけようとしても簡単には出てこない。ソビエト崩壊のようなものか。

 北朝鮮のミサイルや核が、日本の保守化を促し、民進党といったリベラル派の崩壊・分裂をもたらしたという見方がある。おそらく、今回の衆院選挙の持つ意味合いはそうしたところにあるのかもしれない。

 新しい党に期待したいのだが、民主党政権の酷さが学習効果として人々に強烈に残っている。これも日本の保守化を誘っている。

 日本共産党が指摘しているように自民党がふたつあるいまという時代、「安倍一強」だけを敵にしても矮小な話ということになりかねない。
 曖昧でいい加減ではいわゆるリベラル派が生存できない、いわば絶滅する、とするならば、いままでとはかなり違うステージに入っていることだけは間違いない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)

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