曲線的な上昇相場の相場プランには搦め手の材料株セクターとして株式併合銘柄も浮上余地=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

相場の基調は、アップトレンドとみて間違いないようである。本来なら「東芝ショック」や「シャープショック」が、市場の不安心理を募らせても不思議はないのに、東芝<6502>(東1)の不適切会計問題やシャープ<6753>(東1)の大幅赤字転落などは、極く局地的な影響にとどまり、日経平均株価は、25日移動平均線で上値を抑えられたものの下値も固く、大型連休明け後に週足が2週続けて陽足を示現した。個別銘柄でも、増配や自己株式取得などの株主優遇策を素直に歓迎し、超値がさ株、内需系出遅れ株を問わず高値更新銘柄が続出した。東証第1部の売買代金も、昨年5月は連日、活況・不活況の目安とされる2兆円を下回ったが、今年5月は、株高・株安に振れても2兆円台をキープ、先高期待を裏打ちした。

ただ投資家心理がポジティブになっているとしても、今年4月の新年度相場入り時点で高まった「日経平均2万円大台乗せカウントダウン」などの合唱や、大型連休前に強まった「2000年高値2万833円の早期示現」などの威勢のいいエールはなかなか聞こえてこない。欧米市場で上昇した長期金利の先行きがなお不透明で、米国の経済指標も好・不調の発表が交錯し、国内市場も、3月期決算会社の業績発表がほぼ一巡し買い手掛かり難となることなどが、上値の伸びを抑える要因して意識されているためだろう。

こうなると、前回の当コラムでも指摘したように、投資スタンスとしては、直線的な上昇相場では主力株を前面に押し出して正面突破を図る正攻法が大正解となるにしても、その一方で、曲線的な上昇相場では、搦め手から材料株に狙いをつける相場プランも、あるいは有効になるかもしれない。そこで今回は、この相場プランに沿って浮上するターゲットとして株式併合銘柄を一考することを提案したい。

株式併合は、株式分割と逆で、株式分割が、発行済み株式総数を増加させることに対して、株式併合は、発行済み株式数を減少させる資本政策である。かつては過剰債務で経営不安が付きまとい、株価も、超低位に低迷している限界企業だけに例外的に認められていたが、2001年の商法改正により規制緩和され、さまざま目的で実施することが可能となった。このため単元株式数を引き下げる目的で実施する企業などが増加している。今年2015年も、すでに3月2日を効力発生日に暁飯島工業<1997>(JQS)が実施したほか、前週末15日に発表したフランスベッドホールディング<7840>(東1)まで22社が実施を予定している。

この株式併合の株価効果は、株式分割と同様に本来、中立となるものだが、これまで実施した銘柄のその後の株価推移を検証すると、株式併合による理論価格を上回る展開となるケースも目立っている。例えば自動車株は、3社が株式併合を実施し、特異的に集中する業種となっており、このうち昨年8月1日を効力実施日に実施したマツダ<7261>(東1)は、株式併合後に権利付き最終値487円の理論価格を800円超上回る高値まで買われ、昨年10月1日付けで実施したいすゞ自動車<7202>も、同様に理論価格を290円超上回る高値をつけた。

これは、株式併合と同時に実施した1000株から100株に引き下げた単元株式数の変更比率と、株式併合比率に差があって、売買単位が従来の10分の1になるのに対して、株数は、それ以下にしかならず最低投資金額が下がり株価へプラスに働いたことも要因となった。マツダもいすゞも、いずれも単元株は1000株から100株に引き下げたが、併合比率は、マツダが5株を1株、いすゞは2株を1株に併合した。

今後、株式併合を予定している銘柄は、6月1日を効力発生日とするホテル、ニューグランド<9720>(JQS)以下、22社になるが、このうち、併合比率が、単元株式数の引き上げ比率を下回る銘柄にはマツダ、いすゞと同様に理論価格を上回る株高が期待できることになる。該当する銘柄は、14社となっており、このなかから有望株が浮上する可能性があり、個別アプローチ余地が出てくることになる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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