ギリシャ債務問題で内需株シフトのカードが出たら7月に値上げラッシュが続く景気敏感株を消去法的にマーク=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

「人間万事塞翁が馬」、「禍福は糾われる縄の如し」という諺がある。幸福と不幸、幸運と不運は予測不能で、絶えず変化してとどまることがないと生々流転の摩訶不思議さを説く教えである。昨今の株式市場は、この諺の厳しさにことのほか突き動かされている。昨日の買い材料がきょうは売り材料となり、昨日の売り材料がきょうには買い材料に一変するからである。1枚のカードが、寝ている間にオモテからウラ、ウラからオモテに変わって、目が覚めると、上へ下へと大きく夜放れしていることが頻発、オチオチと枕を高くしては寝ていられない。いや、夜放れところか、前場と後場とでカードのウラ・オモテが逆転するなどということさえ少なくない。

ギリシャへの財政支援協議も、そうしたカードの1枚である。前週末6月27日のユーロ圏財務相会合で一件落着となるかとみられていて一時は買い材料、円安フアクターとなったのが、さらに紛糾しそうに深刻化している。ギリシャのチプラス首相が突如、表明したEU(欧州連合)の債権団が求めた財政緊縮策の賛否を問う国民投票を7月5日に実施することをギリシャ議会が承認し、これに先立ってEUサイドが、6月末に期限を迎えるギリシャ支援の延長拒否を決定、問題解決どころか、協議決裂、債務不履行(デフォルト)、ギリシャのユーロ圏離脱などの瀬戸際に追い込まれる成り行きとなっている。これを受けて週明けに先進国市場で最も早くオープンする東京市場では、金融情勢の再緊迫化ニュースの続報とともに波乱展開となるのか、それとも最悪ケースとなっても織り込み済み、悪材料出尽くしとなるかなど予断を許さない。また為替相場も同様で、円高、円安のどちらに振れるのかカードの出方が、オモテかウラか注意深くウオッチしなければならない。折角、中国・上海株の急落は、前週末の中国人民銀行の追加利下げでカードが、売りから買いに変わりそうなのに、一難去ってまた一難、大難である。

しかもこれが、日経平均株価の18年半ぶりの高値水準で繰り返されるから悩ましい。安値圏ならリスク回避の「休むも相場」と早めの夏休みを決め込んで何ら問題はないが、年初来高値更新、上場来高値更新などの銘柄が、続出するのを目にすると、みすみす投資チャンスを逃すのではいかと焦らされたりする。しまいには、この投資家心理の弱みに付け込んで、誰かシナリオを書いてひとり上手く立ち回ってほくそ笑んでいる黒幕がいるのでないかとの勘ぐりも兆してくる。仕掛け人は、黒田東彦日銀総裁なのか、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長なのか、チプラス首相なのか、それとも海外のヘッジファンドなどの古強者なのか、昔のドツキ漫才の決まり文句ではないが、「責任者出てこい」と思わず叫びたくもなる。

黒田総裁の守備範囲は、物価と金融システムの安定である。その黒田総裁の筋書きでは、株高は歓迎である。2%上昇の物価目標を達成するためには、インフレマインドの醸成は不可欠で、株高による資産効果が最も手っ取り早く、現に日銀はETF(上場投信)買いなど株式市場に直に手を突っ込んでいる。雇用・所得環境の好転も、消費者のサイフの紐を緩める消費支出の喚起につながり物価上昇フアクターとなる。為替相場の水準は、同総裁の守備範囲外だが、やや問題である。円安は、輸入物価の上昇を通じて物価を押し上げ、さらに輸出企業の輸出採算を好転させ、ひいては雇用・取得環境の改善につながるから歓迎のはずだが、過度の円安はどうも敬遠らしい。為替相場が、13年ぶりに1ドル=125円台後半まで円安になったときには、円安を牽制したとされる発言をして、122円台まで円高に引き戻している。今回のギリシャ問題で、為替相場が再び1ドル=125円台へ円高となった場合の対応は要注目となる。

7月の個別に予定されている製品価格の値上げラッシュも、黒田総裁は大歓迎のはずだ。円安に伴う原材料価格の上昇を転嫁し採算向上を狙いとしているもので、値上げが浸透すれば業績押し上げ要因になり、景気敏感株の有力な一角に浮上する。しかも、この値上げラッシュが目立つ食品業界は、いよいよ大詰めを迎えるTPP(環太平洋経済連携交渉)による関税引き下げのダブル効果を先取りする期待も高まる。相場全般も、ギリシャ問題を横目に、この影響度合いが薄いとして消去法的により内需株シフトを高めるはずで、投資ターゲットとしてマークしてみたい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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