【どう見るこの相場】「商船三井効果」で株式分割・高配当銘柄は期末に向けてマーケット下支えの粘り腰

どう見るこの相場

 「地獄で仏」、「闇夜に提灯」、「旱天の慈雨」などなどと最大限の賛辞を奉って、出しゃばり過ぎながら商船三井<9104>(東1)に感謝状を贈呈したい。同社は、今年2月28日に株式分割(1株を3株に分割、基準日3月31日)の実施を発表した。この日は、ロシアが2月24日にウクライナに軍事侵攻してから4日目で、地政学リスク懸念で世界のマーケットが大荒れに荒れており、この資本政策のサプライズが、先行きに一筋の光明を示し、あたかも「お助けマン」に名乗りを上げたようにみえたからだ。実際に同社株は、これを歓迎して上場来高値追いの逆行高を演じ、市場をリードした。

 その後のウクライナ情勢は、両国による停戦交渉は継続しているものの、プーチン大統領は、ウクライナ全土で攻撃強化を命じて核兵器使用に言及して威嚇し、原子力発電所まで攻撃・制圧した。対する西側諸国は、ロシアの銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)の決済網から排除する経済制裁強化を決定し、原油価格などのコモディティ価格が急騰する一方、ロシア国債のデフォルト(債務不履行)も懸念されるなど世界経済の下ぶれショックは避けられそうもない。株価も、戦況の長期化、泥沼化とともに一段の世界同時株安を覚悟しなければならないピンチである。

 しかしその最悪シナリオのなかでも、3月期期末の権利付き最終売買日の3月29日が近付いてくれば、商船三井の株式分割の権利取りの買い物がさらに活発化し粘り腰を発揮して下支え効果が絶大となる展開も想定されるのである。しかも3月末に株式分割を予定している銘柄は、同社を含めて12社に達し、商船三井人気の波及も予想される。また、ド本命の海運大手の残り2社への注目度も高まってくるはずで、商船三井への連想買いの上乗せの可能性もある。

 商船三井は、この株式分割発表に先立ち今3月期業績を4回も上方修正し、配当を3回増配している。大手海運3社のなかでは、時間差ではあるが常に一番乗りであり、次いで日本郵船<9101>(東1)や川崎汽船<9107>(東1)が同様に業績を上方修正してきた。上方修正要因が、3社で共同設立している持分法適用会社の定期コンテナ船事業の絶好調推移によるものという事情が働いている。ただ株式分割に関しては、商船三井の発表からすでに1週間が経過し、両社とも沈黙を守ったままであるが、増配についてはやや渋い川崎汽船を含めてマーケットが追随を期待し株価面から催促しプッシュを強めるだけでも下支え効果をアップさせることが予想されるのである。

 3月期期末の権利取りによる下支え効果は、株式分割ばかりではない。高配当銘柄の配当権利取りも、相乗するはずである。3月期決算会社の今年1月から2月に掛けての第3四半期決算の発表時には、業績を上方修正するとともに配当も増配する銘柄が相次いだ。その銘柄のなかには全市場ベースの高配当利回りランキングの上位にランクインするケースも目立っている。

 なかでも注目は、かつて「重厚長大」産業株とされた主力株である。この銘柄群は、投資尺度のPERでもPBRでも配当利回りでも上値評価は無理があり、含み資産を時価評価するか生産設備を再取得価格でバブリーに評価する以外に買い進めなかった。ところが最近は、相次ぎ業績を上方修正し配当を増配するなど様変わりである。PER、PBR、配当利回りのいずれでもバリュー株の一角にノミネートされている。かつてのバブル相場の天国とその後の地獄を痛いほど経験した投資家にとっては、バリュー株の「ニューノーマル(新しい常態)」とも感じられるはず。

 とういことで今週の当特集は、株式分割銘柄とバリュー株の「ニューノーマル」を実現しつつある高配当銘柄の配当権利取りにフォーカスすることとした。格言の「闇夜で鉄砲」は、当たるか当たらないか心許ないことを教えているが、株式分割株も高配当銘柄も、業績上方修正を繰り返すほど好調に推移しており、仮にそうなったにしろ先行きの期待だけは継続しそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国際特許分類や元素リストを用いて多様な解決策を自動生成  AGC<5201>(東証プライム)は1…
  2. ■Newton・GR00T・Cosmosを軸にロボット研究を高速化  NVIDIA(NASDAQ:…
  3. ■700億パラメータ規模の自社LLMを金融仕様に強化、オンプレ環境で利用可能  リコー<7752>…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  2. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  3. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  4. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  5. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  6. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る