フライトホールディングスは戻り試す、23年3月期大幅増益予想

 フライトホールディングス<3753>(東証スタンダード)は電子決済ソリューションを主力としてシステム開発・保守なども展開している。22年3月期は黒字転換した。サービス事業における追加受注に加えて、決済ソリューション「Tapion」に係る開発費などが想定を下回った。そして23年3月期は大幅増益予想としている。キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しである。収益拡大基調だろう。株価は2月の年初来安値圏で底打ちして水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。

■電子決済ソリューションが主力

 子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、子会社のイーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比はC&S事業が28%、サービス事業が66%、ECソリューション事業が6%、利益(全社費用等調整前営業利益)構成比はC&S事業が20%、サービス事業が98%、ECソリューション事業が▲18%だった。なお収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。

■サービス事業は電子決済ソリューションを展開

 サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。

 ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。

 Incredistシリーズでは、戦略製品として据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機として、マイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。

 EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドに認定されている。

 国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了している。さらに交通系ICカード対応では、19年7月にディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOV(現、Mobility Technologiesが提供するタクシーアプリGO)の車内決済システムとして、incredist Premiumが採用されている。スルッとKANSAI協議会が近畿圏を中心に展開しているポストペイ型IC決済サービス「PiTaPa」にも22年春から順次対応する。

 さらに、Android携帯を決済端末として利用できる小・中規模事業者向けの決済ソリューションTapion(タピオン)も市場投入予定である。22年4月にはTapionにおいて推奨Android携帯を選定する独自認定制度Tapion検定の作成と運用開始を発表した。現在は各種セキュリティ認定および国際カードブラン認定作業に入っており、ハードウェア製造に依存しないビジネスとして注力する。

 自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始し、GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。

■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風

 電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となり、非接触が新型コロナウイルス対策としても注目されている。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられ、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)やマイナンバーカードへの統合等の普及促進が図られている。

 こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。

 18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。さらに22年3月には三菱UFJニコスと対面でのクレジットカード決済における包括的加盟店契約を締結した。

 またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。

 22年3月には、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定に基づき、マイナンバーカードを活用した公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として、主務大臣認定(本認定においては総務大臣と内閣総理大臣)を取得した。

■ロボット関連も強化

 C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。

 ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。

■22年3月期黒字転換着地、23年3月期大幅増益予想

 22年3月期連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし、2月10日に下方修正、4月27日に上方修正)は、売上高が21年3月期比4.6%減の32億49百万円、営業利益が1億57百万円の黒字(21年3月期は2億69百万円の赤字)、経常利益が1億54百万円の黒字(同2億75百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が1億14百万円の黒字(同2億82百万円の赤字)だった。

 半導体不足の影響を考慮して電子決済ソリューションIncredistシリーズの新規顧客向け受注を控えたことなども影響して減収だが、既存顧客からのIncredist Premium Ⅱの追加受注があり、さらにAndroid携帯を活用したタッチ決済ソリューションTapionに係る開発費やその他の見込経費が想定を下回ったことも寄与して従来予想を上回り、各利益は黒字転換して着地した。

 C&S事業は売上高が21.6%増の9億16百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が82百万円の黒字(同1億68百万円の赤字)だった。大型基幹システム開発案件の売上が概ね計画通りに推移し、物流企業からの案件の売上が増加した。利益面は前期計上したプロジェクト損失一巡も寄与して黒字転換した。

 サービス事業は売上高が12.5%減の21億42百万円で、利益が2.7倍の4億14百万円だった。前期に利益率が低い仕入品の大口売上を計上した反動で減収だが、電子決済ソリューションIncredistシリーズや無人精算機向けVP6800/IFC案件の利益率改善も寄与して増益だった。

 ECソリューション事業は売上高が6.0%減の1億90百万円、営業利益が75百万円の赤字(同10百万円の黒字)だった。大型開発案件の開発スケジュール遅延で受注損失引当金を計上した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が10億67百万円で営業利益が1億84百万円の黒字、第2四半期は売上高が5億17百万円で営業利益が1億38百万円の赤字、第3四半期は売上高が4億42百万円で営業利益が1億54百万円の赤字、第4四半期は売上高が12億23百万円で営業利益が2億65百万円の黒字だった。

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比7.7%増の35億円、営業利益が39.4%増の2億20百万円、経常利益が29.4%増の2億円、親会社株主帰属当期純利益が31.5%増の1億50百万円としている。

 C&S事業は既存顧客向けシステム開発・保守、DX推進支援、クラウドサービスを活用したシステム開発支援に注力する。サービス事業はマイナンバーカード対応の決済ソリューションIncredist Premium Ⅱや無人精算機向けVP6800/IFCの拡販、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス、Android携帯を活用したタッチ決済ソリューションTapionの開発・拡販に注力する。ECソリューション事業は開発スケジュールが遅延している大型開発案件の収束、既存顧客向けECサイト構築パッケージEC-Rider B2Bのカスタマイズ対応に注力する。

 キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しである。収益拡大基調だろう。

■株価は戻り試す

 株価は2月の年初来安値圏で底打ちして水準を切り上げている。週足チャートで見ると13週線が26週線を上抜いて基調転換を確認した形だ。戻りを試す展開を期待したい。5月27日の終値は460円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円86銭で算出)は約29倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS56円50銭で算出)は約8.1倍、そして時価総額は約43億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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