【株式市場特集】株主還元強化で市場に安心感、好業績企業が牽引する新たな投資トレンド

■株主還元強化が市場の安心材料に

 東京エレクトロン<8035>は8月1日、2025年3月期の業績予想を下方修正し、減配も発表したことでストップ安となり、投資家心理に影響を与えた。加えて、米国市場では7月の雇用統計の悪化を受け、NYダウが542ドル安となるなど外部環境も悪材料が重なった。一方、キヤノン<7751>は7月24日に下方修正を発表したものの、29日に今期3回目となる1000億円規模の自己株式取得を公表し、株価は反発した。決算発表では、上方修正に加え、増配や株式分割を同時に発表する企業も相次ぎ、こうした“保険付き銘柄”への注目が高まっている。今週8日の決算ピークに向け、投資家は自己株式取得の動向を見極めつつ、慎重な選別投資が求められる局面となっている。

■業績上方修正と増配が大半も自己株式取得、株式分割の上乗せも

 前週1日までの決算発表序盤で、フルセットを発表した銘柄は、2銘柄である。時系列的あげると南海電気鉄道<9044>(東証プライム)が業績の上方修正と増配、自己株式取得で、アズーム<3496>(東証プライム)は業績の上方修正と増配、株式分割である。南海電鉄のPERは業績修正で12倍台と割安を示唆しており、値がさ株のアズームのPERは31倍台と市場平均を上回るが、9月30日を基準日とする株式分割(1対2)の権利取りでカバーしてくれることを期待したい。ダブルセット銘柄でも株価の反応が真逆になったケースもあった。同じ海運業界の商船三井<9104>(東証プライム)とNSユナイテッド海運<9110>(東証プライム)で、同じ業績の上方修正と増配のダブルセットなのに商船三井はダウン反応、ユナイテッド海運はアップ反応となっており、今後どちらに収れんするか要注目である。

 ただダブルセット銘柄では、株価がポジティブに反応した銘柄が大半で、年初来高値を更新した銘柄も含まれる。そのうちのバリュー株を時系列的にあげると、川岸工業<5921>(東証スタンダード)、住友理工<5191>(東証プライム)、東リ<7971>(東証スタンダード)、大塚ホールディングス<4578>(東証プライム)、スペース<9622>(東証プライム)、正興電機製作所<6653>(東証プライム)と続く。東リの配当利回りは増配で5%台に乗せ、スペースも同じく4%台に乗せる。この6銘柄は前週に高値反応しただけに、週明けはNYダウの続急落などで利益確定売りが先行する展開も想定されるが、逆張り余地もありそうだ。

■株式分割の権利落ち銘柄にも相次ぎ業績上方修正・増配のフォロー

 今回の決算発表でやや目立ったのが、今年6月26日を基準日に株式分割を実施した銘柄の業績上方修正である。コード番号順にあげるとカンロ<2216>(東証スタンダード)、網屋<4258>(東証グロース)、愛知製鋼<5482>(東証プライム)、コクヨ<7984>(東証プライム)と続く。このうち愛知製鋼とコクヨは、増配も発表したダブルセット銘柄で、愛知製鋼の配当利回りは5.77%に高まり東証プライム市場の高配当利回りランキングの第17位にランクインする。株式分割の権利落ち後もなおフォローの材料が続いており株価押し上げ効果が期待される。

 6月末に株式分割を実施した銘柄は21銘柄を数え、木徳神糧、オカムラ食品工業<2938>(東証スタンダード)、タムロン<7740>(東証プライム)、ノーリツ鋼機<7744>(東証プライム)などの今後の決算発表時の業績ガイダンスなどが注目されることになる。と同時に前週31日に株式分割の権利を落としたコロンビア・ワークス<146A>(東証グロース)や、今月27日に株式分割の権利付き最終売買日を迎える丸千代山岡家<3399>(東証スタンダード)、ベルテクス<5290>(東証スタンダード)などの今後の決算発表からも目が離せないことになりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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