【マーケットセンサー】大正製薬HDの非公開化、背景には市場区分再編の影

■プライム市場を避けた同社、アジア市場での成長戦略に注力か?

 大正製薬ホールディングス<4581>(東証スタンダード)は、現経営陣による株式公開買い付け(MBO)で非公開化することを発表した。MBO価格は、前日終値に対して56.24%のプレミアムが付き、総買付代金は7700億円と過去最高の規模だ。株価は、MBO価格を上回る水準まで急騰したが、PBRは1倍を下回っており、MBOの価格交渉が続く可能性もある。

 しかし、このMBOには、1年半前の東証の市場区分再編が関係していると見る向きもある。同社は、最上位のプライム市場の基準を満たしていながら、スタンダード市場に選択上場したのだ。プライム市場は、世界標準の流動性とガバナンス、グローバルバトルへの参戦が求められるが、同社は、これを望まなかったのではないかという見方がある。非公開化後は、主力の栄養ドリンク剤「リポビタンD」のアジア市場での成長戦略などに集中し、再上場の可能性もあるという。

 株式市場にとっては、同社は、オーナー経営の大衆薬のトップ企業で、安定経営・安定配当のディフェンシブ銘柄だった。投資家にとっては、安全資産としての選択肢が失われることになる。また、同社は業界のトップ企業の一つでもあった。しかし、このような銘柄のイメージは、規制緩和やグローバル化、業界再編などの経営圧力によって希薄化されつつある。同社の非公開化は、この傾向を加速させるかもしれない。自動車や重電などの銘柄も、業界のトップの座を争っている。大正製薬HDの一石が、市場に大きなうねりを起こす可能性があるのだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■金融・医療・公共分野に特化した高精度処理、低コストで安全運用可能  NTT<9432>(東証プラ…
  2. ■ジャイアンツ球場隣接の221邸、シニアの健康・交流を支える新拠点に  フージャースホールディング…
  3. ■IT・スタートアップ中心に若手CEO台頭、経営のスピード化が進展  帝国データバンクは10月14…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  2. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  3. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  4. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  5. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  6. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る